新たな名前は『スマイル』…表舞台から消えた悪徳スカウト『ナチュラル』 の勢力拡大が止まらない

AI要約

東京・歌舞伎町で表面化した売掛金問題により、女性客が多額の借金を抱え、売春に走る事案が増加している。

業界は売掛金を禁止したが、スカウト集団が女性客に入店前に借金をさせる手法を用いており、売掛金問題は根強く残っている。

最大規模のスカウト集団である『ナチュラル』は名前を変えて活動し、ホスト業界との蜜月関係を続けているため、業界の健全化がなかなか進まない状況にある。

新たな名前は『スマイル』…表舞台から消えた悪徳スカウト『ナチュラル』 の勢力拡大が止まらない

「売春すれば、すぐに売掛金返せるでしょ」

昨年末から今年にかけて、東京・歌舞伎町(新宿区)で表面化した悪質ホストクラブに関する問題。売掛金と呼ばれるツケ払いのできるシステムにより、多額の借金を抱える女性客が増加。結果として売春に走る女性も多く、社会的にも大きな批判を集めた。

この問題に対応するため、歌舞伎町のホストクラブ業界は今年4月から売掛金を完全に廃止した。しかし、状況はあまり変わっていないと言う。

「『売掛金』という名前が変わっただけで、女性客に多額の借金を負わせる状況は大して変わっていません。被害にあった女性らを支援する一般社団法人『青少年を守る父母の連絡協議会』の調べによれば、設立された昨年7月から現在まで相談が途切れることはなく、公表されているだけで75人から総額約4億5000万円の売掛金が報告されています。なかには一人で5000万円以上の人もいました」(全国紙社会部記者)

現在でも冒頭のような言葉が当たり前のように飛び交っていると見られる。売掛金はどのように形を変え、存在し続けているのか。そこには、客引き行為を担うスカウト集団が絡んでいるという。歌舞伎町のホストクラブ業界に精通するA氏が、現状について嘆きを込めて話す。

「4月以降も女性に高額な借金を負わせる店は存在しています。現在、店内では売掛金をすることはできません。しかし、このルールを逆手に取って、店の外……つまり入店前に売掛金をすることはできます。この売掛金禁止の抜け穴に大きな役割を果たしているのがスカウトなんです。

女の子を客引きしてきたスカウトは、入店前に、『いくら使いたいか教えてくれたら、僕がツケにできるようにできるようにホストクラブと交渉してあげるよ』などと勧誘しているんです。名前も『売掛金』から『前入金』に変わっています。そうやって、入店前に借金をさせ、遊ばせているんです。批判が集中して利益の落ち込んだホストクラブ側も、売掛金制度を継続できるため、スカウトグループと手を組んでいる。両者の利害が一致し、関係を築き直しているのです」

『スカウト』とは本来、女性に風俗店などの職を紹介するグループを指す。しかしA氏によると、彼らもホスト業界からの需要を受けて、客引きなどのキャッチ行為を行うようになっているのだという。

そんなスカウトグループの中でも、国内最大規模を誇るのが『ナチュラル』だ。歌舞伎町を中心に、全国の繁華街に広く根をはるスカウト集団で、その規模は1000人以上と言われている。言うまでもなく客引き行為は風営法や迷惑防止条例違反になるもので、禁止されている。警視庁は『ナチュラル』を「トクリュウ(匿名型・流動型犯罪グループ)」に該当する集団として警戒し、昨年11月には最高幹部を組織犯罪処罰法違反で逮捕。それ以来、報道などで名前を見る機会も減っていた。

しかし、『ナチュラル』は名前を変え、現在も存続し続けている。A氏が続ける。

「最高幹部が逮捕されたといっても、トップは健在。勢力は衰えていません。名称を『スマイル』と変えて、これまで通り新宿駅を中心に客引きを続けているのです。去年夏前までは、彼らは歌舞伎町の外、主に新宿駅界隈で活動しており、歌舞伎町内では店側に雇われた人間だけが客引きをしていました。それが年明け2月頃、社会的批判を受けて閑散としていた歌舞伎町にも進出し始めたのです。彼らは『スマイル』という名前以外にも『初回ナビ』という名称も使っています。複数の名前を使い分ける理由は、もちろん『ナチュラル』とは違うグループを装うためです。

悲しいかな利益回復のため、このスカウト集団と手を組む店が増えてきているのが現実です。『スマイル』と『初回ナビ』を合わせると、その人数は1500人ほどと聞いています。その勢力は、むしろ拡大傾向にあるようです」

アメーバのように姿を変え、名前を変えて巨大化しつつあるスカウト集団。さらに彼らは、取り締まりを行うホスト業界のキーマンとも蜜月関係にあるという。別のホストクラブ関係者が続ける。

「昨年逮捕された『ナチュラル』の最高幹部と、大手ホストクラブの代表が派手に飲み歩いている動画が最近出回りました。歌舞伎町には今もお店側から雇われているキャッチがいますが、大箱の店が『スマイル』と組んでいるのでは、商売にならない。去年より厳しいですと嘆いていました」

昨年12月上旬、新宿区の吉住健一区長(52)は、歌舞伎町の主要ホストクラブの代表者とともに「売掛金撲滅などを目指した業界団体を作る」と記者会見を行っている。しかし、A氏によれば、現実的には空中分解状態なのだという。

「記者会見後、会見に同席した18の主要ホストグループの代表が『zoom』で何度か話し合いの場を設けましたが、今も参加しているのは4グループほど。業界の組合すらまだ発足していません。脱退したグループは、『スマイル』との関係を優先したとしか思えません」

この状態が続く限り、「業界の健全化」など、とても進められないと言えるだろう。本当の意味で「売掛金問題」を解決するためには、口先だけではない、実行力を伴った早急な対応が待たれる。