熱中症に備え各自治体で設置相次ぐクーリングシェルター

AI要約

佐賀県内の各自治体が熱中症対策を強化しており、公共施設をクーリングシェルターとして開放している。

改正気候変動適応法により、クーリングシェルターの設置と開設が義務化され、熱中症警戒時には施設を開放することになっている。

各市町村では84カ所が指定暑熱避難施設として設定され、熱中症予防休憩所も67カ所設置されている。

熱中症に備え各自治体で設置相次ぐクーリングシェルター

 本格的な夏場を前に、佐賀県内の各自治体が、熱中症対策を強化している。各市町は今年から、危険な暑さの場合に、事前に決めた公共施設などの「指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)」を開設する。日頃から、冷房が効いた施設を無料開放する自治体も多い。物価高が暮らしを圧迫する中、エアコン利用で電気代のさらなる負担増が懸念される今夏。熱中症の増加を警戒する自治体は、こうした施設への積極的な避難を呼びかけている。

 今年4月の改正気候変動適応法の全面施行を受け、クーリングシェルターの設置と開設が全国の市町村で義務化された。重大な健康被害が生じる恐れがあるとして、国が「熱中症特別警戒アラート」を発表した際、自治体はシェルターを開放することになった。

 県によると6月26日時点で、県内の9市町では、役所や公民館などの公共施設を中心に、計84カ所がシェルターとして指定されている。これとは別に、8市町が独自の取り組みとして、シェルターと同じ役割を果たす「熱中症予防休憩所」を計67カ所設けている。

 佐賀市は、公共施設や大型商業施設の計54カ所で、「涼み処」の名称のシェルターや休憩所を設置している。一部の施設を除いて、熱中症特別警戒アラートが発表されていなくても常時、開放している。

 「涼み処」に指定されている市役所ロビーを訪れた女性(78)は「電気代が高いので、エアコンの利用は抑えたい。温度は少しぬるいが、ただで涼めるのはありがたい」と話した。市の担当者は「電気代が気になる人も、健康のために涼み処を活用してほしい」とアピールする。

 武雄市は昨年の夏場から、市役所や公民館、大型商業施設など19カ所を「たけおひんやりスポット」として開放した。本年度は、道の駅山内「黒髪の里」などを加え、5月中旬から計21カ所を運用している。武雄市図書館・歴史資料館では、海外の観光客などの姿もあり、担当の市健康課は「地元住民も買い物客も観光客も、積極的に涼みに来てもらいたい」と話している。

 鳥栖市も、まちづくり推進センター8カ所や市立図書館など計13カ所の公共施設をクーリングシェルターにしている。「気軽に利用してもらえるよう、改めて呼びかけたい」と担当者。市の広報やホームページでの周知に力を入れている。

 県健康福祉政策課によると、熱中症による救急搬送者は、2019年が574人だった。23年には901人にまで増加し、そのうち高齢者が56%を占めている。屋内でも、エアコンを適切に使っていない場合などに、熱中症になる恐れがある。同課は「暑いときは無理して活動せず、涼しいところで休んでほしい」としている。

シェルターや休憩所の場所は、県ホームページやスマートフォンアプリ「防災ネット あんあん」で確認できる。

(米村勇飛、杉野斗志彦、糸山信)

 危険な暑さによって、重大な健康被害が生じる恐れがある場合に、国が発表する。熱中症への最大限の予防行動を促すことを目的に、今年から運用が始まった。発表された際に、市町村はクーリングシェルターを開放する。

 気温や湿度などから算出する指標「暑さ指数(WBGT)」が、都道府県内の全地点で35以上になると予想される場合に発表する(県内は全5地点)。熱中症の危険性が特に高い高齢者や乳幼児への配慮や、対策が徹底できない場合は運動やイベントの中止・延期の検討を呼びかける。