「笑顔を見せれば好印象」は大間違い…昭和・平成は問題なかったが令和時代に増加した"笑顔"のリスク
ビジネスにおけるコミュニケーションに求められる要素について、物流エコノミストの鈴木邦成さんが提言している。現代の娯楽メディアで見慣れた大きな笑いに慣れている人々は、微笑みが足りないと感じる可能性があり、それがコミュニケーション上のストレスを引き起こすと説明している。
アイスブレイクという概念は日本独自のものであり、欧米には存在しない。アイスブレイクは初対面の人同士が打ち解けることを目的とするが、日本語の定義やニュアンスは英語と異なるため、注意が必要である。
アイスブレイクの代わりに欧米ではスモールトークという概念があり、これは会話の冒頭で緊張をほぐすためのちょっとした会話を指す。大切なのは相手とのコミュニケーションを円滑にするための工夫である。
ビジネスで求められるコミュニケーションとはどのようなものか。物流エコノミストの鈴木邦成さんは「自分は十分な笑顔を見せているつもりでも、テレビやYouTubeで大きな笑いを見慣れている今の時代は『笑っていない』ととらえられるリスクはかなりある。そうなると笑顔の存在自体がコミュニケーションに“滞り”を生むストレスになる。『笑顔を見せれば好印象だ』というバイアスは捨てるべきだ」という――。
※本稿は、鈴木邦成『はかどる技術』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
■欧米に「アイスブレイク」という概念は存在しない
営業先ではいきなり本題に入らず、まずは相手を知るという意味で、アイスブレイクを行うのがいいと、よくいわれます。
アイスブレイクとは初対面の人同士が打ち解けることを目的に行われ、自己開示や雑談、あるいはちょっとしたゲームなどを提供することで場の雰囲気を和(なご)ませる効果があるというのが定説です。
実際、アイスブレイクの信奉者も多く、営業だけでなく、会議や新入社員研修などでも行われています。
しかし、アイスブレイクの概念については突っ込みどころが満載です。
まず、アイスブレイクというのは和製英語で、欧米にはそんな概念は存在しません。そもそも欧米と日本では雑談の定義自体が異なるのです。
日本語の雑談に当たる英単語としてはチャット(chat)があります。ただし、チャットというのは、よく知っている人が目的を持たずに話す場合に使われる単語です。「緊張をほぐす」という意味合いでは使われません。
友だち同士の打ち解けた感じでの「他愛もないおしゃべり」を意味するので、アイスブレイクとはかなりニュアンスが異なります。
そこで、日本語の(というか和製英語の)アイスブレイクのように会話の冒頭で緊張をほぐす場合は、スモールトーク(small talk)が使われます。
スモールトークというのは、ショッピングするときなどに店員と交わすちょっとした会話のことをいいます。基本的には、よく知らない人にちょっと話しかける場合のトークと解釈していいでしょう。