九州豪雨から4年、熊本県球磨川の緊治水対策が難航…かさ上げ工事の遅れや遊水地反対の署名も

AI要約

2020年7月の九州豪雨で氾濫した熊本県の球磨川で国が進める緊急治水対策について、工事の遅れや計画の問題点が明らかになっている。

球磨川中流部や上流部での対策計画に関する具体的な事例や課題が報じられており、対応が難航している状況が示されている。

問題解決や対策の進捗について国や地元の関係者が苦慮している様子が描かれている。

 2020年7月の九州豪雨で氾濫した熊本県の球磨川で国が進める緊急治水対策が、難航している。4日で発生から4年。中流部で宅地をかさ上げし、上流部で遊水地をつくる計画だが、かさ上げ工事の一部で半年以上遅れが生じ、遊水地の建設予定地からは反対署名が提出されるなど新たな課題が浮上。国は「予定通り対策を進める」としつつ、対応に苦慮している。(有馬友則、古野誠)

 球磨川中流部に位置する球磨村の神瀬地区。浸水被害を受けた宅地のかさ上げが進む。同地区の建築業上蔀忠成さん(50)の自宅は昨年11月、かさ上げが終わった。上蔀さんは自宅を見ながら、「当たり前の生活に戻る第一歩ですね」と笑顔を見せた。

 豪雨による川の氾濫で、木造2階建ての自宅は約5メートル浸水。地区の郵便局や診療所は被災して閉鎖され、地区の世帯数も、約80世帯から約30世帯に激減した。

 上蔀さんは当時、両親と妻、小学生の息子2人と暮らしていたが、子どもの進学を考えて都市部に近い別の地区の災害公営住宅に入居した。「将来は生まれ育った古里に戻りたい」と自宅を解体せず、かさ上げすることにした。

 ただ、かさ上げの高さは約2・5メートルで、豪雨時に浸水した深さの半分にとどまる。地区全体でもかさ上げは最大約3メートルで、安全確保には流水型ダムや遊水地に貯水し、流量を減らす必要がある。「大雨が降ってまた洪水が起きれば、全て流されるのではないか」。上蔀さんは不安げに漏らした。

 緊急治水対策では、八代市、芦北町、球磨村の3市町村31か所で、宅地のかさ上げや特定の区域を囲む堤防「輪中堤」の整備が計画されている。かさ上げの事業完了は25年度末だが、着工は今年5月末までに17か所にとどまる。また今年3月末に完成を予定していた工事も未完成で、半年以上遅れる見込みという。

 遊水地の整備を巡っても紛糾している。整備を計画する錦町では2月、町内の農家を中心に計約1000人分の反対署名が町に提出された。