能登地震半年、木造住宅の耐震診断急増…4、5月分で昨年度の倍以上申請

AI要約

能登半島地震の発生から半年が経ち、福井県内では木造住宅の耐震化に関する関心が高まっている。県は木造家屋の耐震改修費を全額補助する取り組みを開始し、診断の申請数が急増している。

一級建築士の清水栄一さんが率いる「福登建設」では、耐震改修工事を進める中、危険性が高い家屋も多いことが明らかになっている。

能登半島地震の被害を踏まえ、福井県が耐震改修に積極的に取り組んでいることが示されている。

 能登半島地震の発生から7月1日で半年を迎える。福井県内では木造住宅の耐震化への関心が高まり、耐震診断の申請数が急増。県は今年度から木造家屋の耐震改修費の「全額」補助を始めており、4、5月の2か月間で2023年度の2倍超の診断の申し込みが寄せられた。県は申請がさらに増えるとみて、補助事業に必要な費用を盛り込んだ一般会計補正予算案を開会中の定例県議会に提出。積極的な活用を呼びかける。(荒田憲助)

 「昨年までは、耐震化に関する相談は年に数件だった。元日の地震以降は週に2、3件のペース。こんなことは初めてだ」

 耐震診断や設計、改修工事を手がける「福登建設」(福井市)の社長で1級建築士の清水栄一さん(56)は6月27日、福井市内で耐震改修中の家屋で取材に応じ、汗を拭った。

 この家屋は築50年を超えており、清水さんは壁の一部をはがし、耐震性を高めるため、柱と柱の間に木材をたすき掛けに入れる「筋交い」を施す作業を進めていた。依頼した住人が「基礎がある」としていた箇所が空洞だったことも判明。改修後に強度を保てるか再度の計算が必要という。

 清水さんは「この家のように、住人の想像以上に危険な例も多い。命を守るために、専門家による診断と改修を受けることは重要だ」と力を込める。

 能登半島地震では、1981年導入の新耐震基準を満たした住宅の割合(耐震化率)が5割程度にとどまっていた石川県輪島、珠洲両市で被害が多発。全半壊した家屋は両市で計1万2000棟を超え、一部損壊を含めると計約2万1000棟に上った。清水さんは「屋根に積雪があると、重みで倒壊しやすくなる。もし豪雪の年に発生していたら、被害はさらに大きかったはずだ」と指摘する。

 地震を受け、福井県は81年5月以前に建てられた木造住宅を耐震改修する際、国や市町と合わせて8割としていた補助について、24~25年度は150万円を上限に自己負担額の10割を補助することを決定。一般会計当初予算に約3600万円(診断155件、改修45件)を盛り込んだ。