運転免許手放した高齢者の代替移動手段として期待 電動シニアカーの注意点 「車」だけど「歩行者」扱い、事故の危険も

AI要約

電動シニアカーの安全性についての体験談が紹介されている。転倒や転落の危険があるため注意が必要だが、利用しやすく免許不要であることが魅力。

電動シニアカーの使い方や安全対策について解説されている。簡単に操作できるが急な坂道などには注意が必要。

電動シニアカーの価格や利用方法について詳細が説明されている。介護保険を適用したレンタルもある。

運転免許手放した高齢者の代替移動手段として期待 電動シニアカーの注意点 「車」だけど「歩行者」扱い、事故の危険も

 電動シニアカーの後輪が舗装路から外れて動かなくなり、パニックで過呼吸になった-。福岡県筑紫野市の男性からこの春、西日本新聞「テレプラ」窓口にこんな体験談が寄せられた。郵便配達人の助けで窮地を脱したそうだが、踏切内であれば大事故にもつながりかねない出来事だろう。電動シニアカーは免許が不要で気軽に乗れるのが魅力。ただし、自転車とは異なる安全への配慮が欠かせない。(特別編集委員・岩田直仁)

 「うわー、気持ちいい!」。電動シニアカーに初めて乗ったという女性(82)の声が弾む。ハンドルを操作しながら、「これなら、誰でも乗れるよ」と周囲の友人に笑顔で話しかける。

 北九州市八幡東区の大谷球場で4月に開催されたグラウンドゴルフ大会。高齢の出場者を対象に、九州スズキ販売(福岡市)が「セニアカー」(電動シニアカー)のPR・試乗会を、球場の駐車場で開いた。

 アドバイザーの電動車両主任、須賀大貴さん(40)が「ハンドル内のレバー一つで、アクセルとブレーキの操作ができます。発進、と停止で使うのは指だけ」と話す通り、使い方は至って簡単。スピードは時速1~6キロの間でダイヤルで決め、前進・後進はスイッチで切り替える。

 同区では傾斜地に建てられた家が多いだけに、男性の高齢者から「坂道は大丈夫かね?」との質問も。「馬力は十分ですが、急な坂道は転倒、転落の恐れがあるので避けてください」と須賀さん。車体には注意・警告を伝えるための傾斜センサーが内蔵されるなど、さまざまな安全対策が施されているが、利用上の注意点は他にもあるという。

 電動シニアカーは電動車いすの一種で、「セニアカー」「電動カート」といった名称で販売されている。4輪の車体をハンドルで操作するタイプが主流で、大手メーカーの商品では30万~50万円の価格帯が売れ筋という。

 介護保険を適用したレンタルを行う福祉用具店などもある。電動車いす安全普及協会(静岡県)によると、年間の出荷台数は2万台前後で推移している。

 重いバッテリーを積載するため、重量が100キロ前後の機種も少なくない。筑紫野市の男性がパニックになったのは、一人では車体を動かせなかったためだ。

 道路交通法では歩行者扱いとなるため、最高速度は時速6キロを超えないよう設計されている。当然ながら、歩行者として交通ルールとマナーを順守することになる。通行するのは歩道または右側路側帯。横断歩道を利用し、信号機がない道路の横断は左右の確認が欠かせない。

 電動だけに、バッテリーの残量には注意が必要だ。専門店での定期点検も欠かせない。