地籍調査の実施10% 全国ワースト2の三重で議論始まる

AI要約

三重県の地籍調査実施率が低いことが問題視されている。所有者不明の土地が災害復興に影響する可能性も示唆されている。

地震や火災などの被害発生時には地籍調査が必要であり、遅延が復興作業を妨げる恐れがある。

地籍調査の遅れによって過去の事例では被災者の住宅修繕が遅れるケースがある一方、従来からの取り組みで円滑な復興事業が可能になるケースもある。

 土地の所有者や境界などを定める地籍調査の実施率が、三重県は1割にとどまり、全国ワースト2位となったことが明らかになった。地籍調査は近年、大規模災害に備えた「事前復興」の役割があるとして注視されている。能登半島地震で被害が大きかった石川県の奥能登4市町では、所有者が不明な土地が復興事業の遅れにつながるとの懸念が出ている。三重県では、南海トラフ地震に備えて地籍調査を進めようと議論が始まった。(松岡樹)

 国土交通省や県によると、県の地籍調査の対象面積は5380平方キロ・メートル。このうち、2022年度末現在の実施率は10%(530平方キロ・メートル)で、全国平均(52%)を大幅に下回った。特に宅地は15・6%(全国平均52%)、林地は4・9%(全国平均46%)と低調だった。

 県議会では、こうした状況を問題視する声が上がっている。12日の一般質問で答弁した長崎禎和・地域連携・交通部長は「慢性的に(地籍調査を担当する)人手が足りず、土地所有者が不明だったり、遠方に居住されていたりして、現地での立ち会いに苦慮している」と背景を語った。

 地籍調査が実施されていない土地が地震や火災などの被害にあった場合、復興の遅れにつながる恐れがある。復興事業を始める前に、土地の測量をして1か所ずつ区画や所有者を確定する必要が生じるためだ。

 能登半島地震の被災地では、石川県能登町の地籍調査実施率が6%、輪島、珠洲市と穴水町は1%で、復旧作業への影響が懸念されている。

 

 2011年に発生した東日本大震災で全国最大規模の液状化が起こった千葉県浦安市では、約8700棟に影響が出たが、地籍調査の遅れから震災から10年過ぎても被災者の住宅修繕が進んでいないと指摘されている。一方、地籍調査がほぼ完了していた宮城県山元町では、復興事業で用地を取得する際に、所有者との交渉が円滑に進んだという。

 南海トラフ地震は30年以内に70~80%の確率で発生するといわれる。三重県は地籍調査を進めるため、副知事が主導して県内で調査が遅れている原因を分析する。県内の市町にも調査を呼びかけていくとしている。

 津市も「事前の備えとして、地籍を正確な地図に落とし込んでいく必要がある」(前葉泰幸・津市長)との考えだ。津波の浸水が予想される国道23号の東側の地籍調査を32年度までに終了させる。これにより、実施率は現在の5%から7・6%に上昇するという。