性犯罪歴の照会期間が課題…執行猶予つけば判決確定から10年まで

AI要約

子どもを性暴力から守る新制度「日本版DBS」が2026年度をめどに創設される。過去に性犯罪を起こした人を、子どもと接する職場から遠ざける仕組みだ。

広島市の20歳代の会社員女性は、小学校高学年の頃に通い始めた学習塾の男性講師から約10年間、性被害を受けた。

日本版DBS制度の設計では、性犯罪歴を確認できる期間をどうするかが争点の一つとなった。

 子どもを性暴力から守る新制度「日本版DBS」が2026年度をめどに創設される。過去に性犯罪を起こした人を、子どもと接する職場から遠ざける仕組みだ。対策の切り札となるのか。課題を探る。

 広島市の20歳代の会社員女性は、小学校高学年の頃に通い始めた学習塾の男性講師から約10年間、性被害を受けた。

 講師数人ほどの小規模の塾。男性講師の一人に「勉強をみてあげる」と声をかけられ、講師宅で下半身を触られた。女性は塾をやめた後も講師宅に呼ばれ、「愛しているから」となだめすかされ、裸の動画を撮影された。

 関係は20歳頃まで続いた。その後、突然涙が出たり、眠れなくなったりするようになった。女性は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したとして、昨年2月に、すでに塾をやめていた講師を相手取り損害賠償を求めて提訴。元講師が性加害を認めて謝罪し、慰謝料を支払うことなどで同年6月、和解した。

 女性は「塾の先生という立場に従っていたが、わいせつ目的で子どもを手なずける『グルーミング』だった」と振り返る。

 日本版DBS制度は、子どもと接する職場で働く人の性犯罪歴の有無を確認し、あった場合に就業制限を可能とする。学校や保育所などには確認を義務付けた一方、民間の学習塾などの制度参加は任意とした。

 学習塾を経営する民間の大手事業者の多くは保護者の安心や信頼を高めるため、参加するとみられる。だが、小規模事業者にまで広がるかは未知数だ。

 小規模の塾などでは指導者と教え子の距離感が近く、人目にもつきにくいとの指摘もあり、女性は「個人塾や小規模も含め、塾全体にDBSへの参加を義務化すべきだ」と訴える。

    ◎

 日本版DBS制度の設計では、性犯罪歴を確認できる期間をどうするかが争点の一つとなった。こども家庭庁によると、性犯罪で禁錮刑以上となった人の判決が確定してから「再犯」で判決が確定するまでの期間は、9割超が20年に収まっていた。これを根拠に、拘禁刑(懲役と禁錮の両刑を25年に一本化)では刑の執行終了から「20年」、執行猶予がついた場合は判決確定日から「10年」を確認可能とした。