進む教科書のデジタル化と活用方法の課題

AI要約

2024年6月6日~8日、東京・有明で教育関係者向けの総合展示会「New Education Expo 2024 in 東京」が開催され、セミナー「学習者用デジタル教科書の現状と今後~数学、英語を中心に~」では、学習者用デジタル教科書の効果や留意点、今後の展望や実践事例について議論が行われた。

文部科学省の黄地氏は、デジタル教科書の現状について紹介し、活用が増加している一方で、効果的な活用には課題があることを指摘。2024年度からの提供拡大を通じて学習の充実や困難の低減を目指すと述べた。

アンケート調査から、デジタル教科書の活用がまだ進んでいない現状が明らかになっており、文部科学省は効果的な活用事例の発信と継続的な利用促進を図ることが重要と説明している。

進む教科書のデジタル化と活用方法の課題

 2024年6月6日~8日、東京・有明で教育関係者向けの総合展示会「New Education Expo 2024 in 東京」が開催された。セミナー「学習者用デジタル教科書の現状と今後~数学、英語を中心に~」では、学習者用デジタル教科書の効果や留意点、今後の展望や実践事例などについて、文部科学省の担当者と有識者がパネルディスカッションを行った。

 セミナーには文部科学省初等中等教育局 教科書課長の黄地吉隆氏、神戸大学 大学院人間発達環境学研究科 教授の岡部恭幸氏、東京家政大学 副学長の太田洋氏の3人が登壇し、放送大学 客員教授の佐藤幸江氏がコーディネーターを務めた。

 文部科学省の黄地氏は、学習者用デジタル教科書の現状について紹介した。GIGAスクール構想で学校におけるデジタル教材や学習支援ソフトの導入が加速し、学習者用デジタル教科書がデジタル教材と接続して連携強化を図ることが学びの充実につながっているとした。「デジタル教科書自体はシンプルで軽いものとし、デジタルの強みを生かして、ほかのさまざまな教材やソフトウエアと効果的に組み合わせて、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実を図ることが重要だ」と黄地氏は話した。

デジタル教科書の発行割合は大幅に増加している。教科書会社が発行する教科書のうち、2023年度時点で中学校では98%、小学校で93%、高等学校で79%がデジタル版も発行されている。2024年度には小学校の教科書の100%、中学校の教科書の95%がデジタル教科書も発行する見込みという。

 一方、文部科学省がデジタル教科書を活用している小学校・中学校の教員を対象に2023年1月~2月に実施した「学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業」のアンケート調査では、授業でデジタル教科書の活用頻度が25%未満(4回に1回)と回答した教員が一定割合存在し、デジタル教科書の活用が十分進んでいるとは言えない状況だ。「デジタル教科書の効果的な活用事例を発信し、継続的な利用を促進する必要がある」と黄地氏はいう。

 文部科学省は2024年度から全ての小中学校で英語、一部の小中学校の小学校5年生から中学校3年生を対象に算数・数学のデジタル教科書を提供していく。学習者用デジタル教科書の導入により、児童・生徒の学びの充実や子供の障害等による学習上の困難の低減を実現していく。