娘3人殺害 「思い詰め、適切な対処困難」 育児疲れ心情に理解 名古屋地裁判決 懲役23年

AI要約

29歳の遠矢姫華被告が0~5歳の娘3人を殺害し、懲役23年の判決が下された。被告は育児に疲れ、自己責任を感じながらも適切な対処が難しかったとされる。

事件の数日前には食事面で悩み、自殺方法などを検索するという異変が見られ、最後に子どもたちの笑顔を見たいと思いつつ、無理心中を決意した。

裁判員裁判の結果や元裁判員のコメント、名古屋市の育児支援策についても触れられた。親のキャパシティーやサポートの重要性が示唆されている。

 「思い詰めて、必要以上に自分を責め、適切な対処は難しかった」。0~5歳の娘3人を殺害したとして、殺人罪に問われた遠矢姫華被告(29)について懲役23年とした名古屋地裁の11日の裁判員裁判。判決は、完全責任能力を認定した一方、幼い娘たちの育児に疲れ、追い込まれていく被告の心情に理解を示した。(福益博子、反保真優)

 判決によると、遠矢被告は2016年10月から21年4月にかけ、娘3人を出産した。次女に食物アレルギーがあったことなどから食事に気を使っていたが、コロナ禍で長女の保育園が休園になるなどし、献立を考えることに難しさを感じるようになった。

 事件の数日前、長女の質問に答えられず「教養がない」と落ち込み、自殺方法などを検索するようになった。直前には「最後に子どもたちの笑顔が見たい」と、避けていたファストフード店のパンケーキを長女と次女に与えたという。

 判決は、こうした経緯について「真面目で責任感が強い性格から食事面への配慮に行き詰まり、悩んでいたところ、自信を失うエピソードが続き、無理心中を決意するようになった」と指摘した。

 さらに、パンケーキを食べた娘たちが喜んだとの話も「添加物を遠ざけて我慢させてきたことが、果たして母親としてふさわしかったかとの自責の念を強める方向にも作用した」とした。

 遠矢被告はまっすぐ前を向き、じっと判決を聞いた。最後に吉田智宏裁判長から「分かりましたか」と問われると、小さな声で「はい」と答え、法廷を後にした。

 判決後、元裁判員が報道陣の取材に応じた。

 男性(28)は子育ての経験はないが、経験のある裁判員との議論を通じて「被告のような状況の親は珍しくないと感じた」という。一方で、「キャパシティー(対応能力)は人それぞれ。本人が自分のことを理解し、周りも理解してサポートできないと被告のように追い込まれてしまうのではないか」と語った。

 名古屋市では、育児に関して24時間365日相談できる窓口「なごやっ子SOS」を設けている。医療機関での受診や家庭訪問を拒む親もいるといい、子どもの定期健診や新生児訪問などでの関係作りに努めているという。市は「頑張り過ぎてしまう親もいる。思いを受け止め、一緒に考えていきたい」としている。

 県内では、火~木曜の午後5~9時に電話相談できる「育児もしもしキャッチ」(0562・43・0555)や、困りごとをチャットで相談できる「育児つながるLINE」などもある。