視覚障害があっても「思い切り走れる」 伴走でともに楽しみ20年

AI要約

視覚障害者と伴走者がともに走ることを楽しむ市民グループ「伴走フレンドリー」が20年目を迎えた。大野さんが設立メンバーで、呼吸を合わせて走る魅力を語る。

札幌市南区の真駒内公園で行われた練習会では、視覚障害者と伴走者が息を合わせて走り、楽しんでいる様子が描かれる。

伴走フレンドリーは2005年設立され、現在は32人の視覚障害者と56人の伴走者が参加。毎週土曜に練習会を行い、一緒に走ることを通じて成長している。

視覚障害があっても「思い切り走れる」 伴走でともに楽しみ20年

 札幌市を拠点に、視覚障害者と伴走者がともに走ることを楽しむ市民グループ「伴走フレンドリー」が設立20年目の節目を迎えた。設立メンバーの大野雅嘉さん(79)は「視覚障害者と伴走者が呼吸を合わせ、走りきるのが魅力」と語る。【今井美津子】

 「この先、だんだん上りますよ」。8日に札幌市南区の真駒内公園のランニングコースで開かれた伴走フレンドリーの練習会。視覚障害者と伴走者がともに輪になったロープを持ち、伴走者が路面やコースの状況について声をかけながら、息の合った様子で駆け抜けていった。

 伴走フレンドリーは2005年に設立。大野さんがクロスカントリースキーの大会に出場した際、視覚障害者の選手が楽しそうに話をしていたのを見かけ、「何か手伝えることはないだろうか」と思ったことがきっかけだ。視覚障害者の伴走の経験があった知人に声をかけ、グループを立ち上げることになった。

 現在は視覚障害者32人、伴走者56人が所属する。毎週土曜に真駒内公園で練習会を実施しており、この日は視覚障害者16人、伴走者22人が参加した。走る前には毎回自己紹介をして、ともに走るペアを発表するのが恒例だ。大会に出場したい、体力作りをしたいなど参加者の目的や走力に合わせ、1~2時間ほど練習する。

 「視覚障害があると外出を控えがちになる人もいるという。歩くだけでもいいんです」と大野さん。毎回ペアが異なるため、さまざまな人と走ることができるのも楽しみの一つだ。

 数年前に入会した視覚障害のある的場典子さん(68)は「当初は500メートルくらいしか走れなかったのに、一昨年は北海道マラソンを完走できた。今年も完走が目標」と意気込む。的場さんの伴走をしていた栗山るり子さん(60)は「フレンドリーに入り、人間として尊敬する人に出会えた」と話す。

 会長で生まれつき弱視の佐藤成恵さん(60)は元々は1人でランニングしていたというが、視力の低下などを理由に17年前に入会。今月6日に利尻島で開かれた島内を一周する大会「利尻島一周悠遊覧人G」では、栗山さんとともに53・6キロを7時間18分で走りきった。佐藤さんは「伴走者がいるおかげで、思い切り走れる」と感謝する。

 これまで伴走者の不足や新型コロナウイルス禍での練習会の自粛など、活動の継続が窮地に立たされることもあった。大野さんは「厳しい時を経て20年続けることができた。安全に走るのが大前提だが、自然の中で体を動かしてほしい。これからも楽しく続けていきたい」と話している。