政府の「能動的サイバー防御」、情報取得など監視する独立機関設置へ

AI要約

政府は重大なサイバー攻撃を未然に防ぐため、"能動的サイバー防御"の導入に合わせ、通信情報の活用状況などを監視する第三者機関の創設を調整している。

能動的サイバー防御は重要インフラへの攻撃を阻止するために通信情報を活用し、攻撃を事前に検知して無害化する構想であり、国家安全保障戦略で導入が明記されている。

政府は夏までに会議の議論を終え、秋の臨時国会へ関連法案を提出する予定で、通信の秘密を尊重しながら官民連携や通信情報の活用、侵入・無害化権限について議論を進めている。

 政府は重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」の導入に合わせ、国による通信情報の活用状況などを監視する独立した第三者機関を創設する方向で調整に入った。7日に始まった政府の有識者会議や、与党での議論を踏まえ、詳細を詰める方針だ。

 能動的サイバー防御は、発電所などの重要インフラへのサイバー攻撃を阻止するため、政府が平時から一定の通信情報を活用して攻撃を事前に検知し、必要に応じて攻撃元のサーバーなどに侵入して無害化する構想だ。2022年12月に改定された国家安全保障戦略で導入が明記された。

 ロシアはウクライナ侵略で事前に変電所などのシステムにサイバー攻撃を仕掛ける作戦をとっており、日本は米国などから対策の遅れが指摘されている。

 岸田首相は首相官邸で開かれた会議の冒頭、「我が国のサイバー対応能力の向上は現在の安全保障環境にかんがみ、急を要する課題だ」と述べ、河野デジタル相に対し、「可能な限り早期に関連法案を取りまとめてほしい」と指示した。

 政府は夏までに会議の議論を終え、秋の臨時国会へ関連法案を提出する考えだ。

 会議の正式名称は、「サイバー安全保障分野での対応能力の向上に向けた有識者会議」。憲法や通信の専門家ら17人で構成し、佐々江賢一郎・元駐米大使が座長に就いた。

 この日の会合では、憲法が定める「通信の秘密」を最大限尊重した上で、早期の法整備が必要だとの認識を共有した。〈1〉官民連携の強化〈2〉通信情報の活用〈3〉侵入・無害化権限の政府への付与――の3点について、それぞれ分科会を設けて議論を進める。

 創設が検討されている第三者機関は、〈2〉の分科会で議論が行われる見通しだ。サイバー攻撃対策などで通信情報を活用している米英などでは独立した機関が監督を行っている。政府・与党内では、内閣府の外局として設置された個人情報保護委員会のように高い独立性を認め、政府による通信情報の取得などが適切に行われているかどうかをチェックする案が出ている。