なぜトム・クルーズは「カルト宗教」にハマったのか…「サイエントロジー」が説く即効性のある教義の正体

AI要約

サイエントロジーはアメリカの宗教団体で、トム・クルーズやジョン・トラボルタが入信しているが、一部ではカルトと見なされている。

サイエントロジーはアフィニティ、リアリティ、コミュニケーションという基本原理を重視し、チック・コリアが日本で布教活動を行うなどして信仰の普及に貢献していた。

チック・コリアはサイエントロジーの重要な人物であり、教団のイベントで演奏を披露するなどして活動していた。

トム・クルーズやジョン・トラボルタといった著名人が入信している「サイエントロジー」とはどんな宗教なのか。宗教学者の島田裕巳さんの著書『日本の10大カルト』(幻冬舎新書)から一部を紹介する――。(第3回)

■T・クルーズ、J・トラボルタが入信する「カルト」

 サイエントロジーはアメリカ合衆国に生まれた宗教団体である。ただ、キリスト教系とは言えない。

 アメリカのサイエントロジーには、著名人が入信しており、その代表がトム・クルーズとジョン・トラボルタである。その点でハリウッド・セレブの宗教というイメージがあるが、一方では、カルトの代表と見なされることも少なくない。

 私は、高校時代以来のジャズファンで、ジャズの世界には興味を持ってきたが、ピアニストのチック・コリアもサイエントロジーの信者だった。

 チック・コリアの代表的なアルバムの一つに、『A.R.C.』がある。トリオによる演奏で、デイブ・ホランドのベースとバリー・アルトシュルのドラムスが共演している。黒い色のジャケットの表には白で正三角形が描かれ、AとR、そしてCの文字が、その正三角形の内部に描かれた3つの小さな正三角形のなかにそれぞれおさまっている。そのため、真ん中には逆さの正三角形ができているが、そのなかは空白である。

 このジャケットを見ただけでは、A.R.C.が何を意味しているか分からないし、多くのファンは意味を考えることもないだろう。だがそれは、サイエントロジーが重視する基本的な原理を示している。

■日本に「サイエントロジー」を広めたピアニスト

 Aはアフィニティ(Affinity)で、親愛の情を意味する。Rはリアリティ(Reality)で現実性を、そして、Cはコミュニケーション(Communication)で、これは日本語でもコミュニケーションである。

 サイエントロジーでは、この三つの原理を示す際に、アルバムジャケットのように三角形が用いられる。

 アルバムのなかには、「A.R.C.」という曲もおさめられている。歌詞がついていないので、その曲を聴いても、サイエントロジーやその教えが連想されるわけではない。だが、このことを知った上で聴いてみると、それまでとは違った印象を受けるし、そこに込められた奏者の気持ちを推量したくなってくる。

 日本のサイエントロジーのスタッフから聞いたところでは、日本にその信仰を取り入れるにあたってチック・コリアが果たした役割はかなり大きいという。具体的にどういったことをしたのかまでは分からないが、彼が演奏のために来日した際には、あわせてサイエントロジーの布教活動にあたっていたことになる。

 チック・コリアは、2021年に79歳で亡くなっているが、サイエントロジーのサイトを見ると、教団のイベントの際に、彼がたびたび演奏を披露していたことが分かる。その面でも彼は、サイエントロジーにとってかなりの重要な人物だったのだ。