西日本のPCB廃棄物、国が室蘭市に処理要請 3施設稼働終了に伴い

AI要約

北海道のPCB廃棄物処理施設が西日本地域からの高濃度PCB廃棄物の処理を受け入れるよう国から要請を受けている。

PCBは食品公害の原因物質として知られ、無害化処理が必要な化学物質である。

室蘭市の施設は高温プラズマ処理が可能であり、施設の対象地域は幾度となく拡大されてきた経緯がある。

西日本のPCB廃棄物、国が室蘭市に処理要請 3施設稼働終了に伴い

 人体に有害な高濃度のポリ塩化ビフェニール(PCB)廃棄物を処理する「中間貯蔵・環境安全事業」(JESCO)の北海道事業所がある室蘭市が、新たに西日本地域から出る高濃度PCB廃棄物の処理を受け入れるよう、国から要請を受けている。3日には、国定勇人・環境大臣政務官らが青山剛市長を訪問し、改めて要請した。

 国の要請は、3月末で北九州市や大阪市、豊田市(愛知県)の三つの処理施設が稼働を終えたことに伴うもの。環境省は昨年12月に北海道や室蘭市に3施設の処理終了に伴って、受け入れ要請を行っており、今回が2度目となる。

 PCBはかつて変圧器(トランス)やコンデンサーの絶縁油などに使われた化学物質で、食品公害「カネミ油症」の原因物質の一つになった。事件を機に製造は中止されたが、特殊な廃棄方法が必要なため法律に基づいて国が全額出資するJESCOが無害化処理を進めている。

 室蘭市の施設では化学処理のほか、現在では全国で唯一、高温によるプラズマ処理できるのが特徴。元々は道内からのPCB廃棄物に限定した処理を目的に設置が決まった。しかし、2008年の操業開始前に国側の要請で道内のほか、東北、北関東、甲信越、北陸の15県からの搬入を認めるなど最終的に対象地域は1都18県に拡大。当初は16年7月までとされていた操業期間も26年3月まで延長されるなど幾度も計画変更を受け入れてきた。東京電力福島第1原発事故で汚染されたPCBの処理も行った。

 国定政務官は「度重なる国の要請を申し訳なく、市民らに苦渋の決断をさせたことを心苦しく思う」と述べた。その上で今回の要請について「26年3月末で事業を終えると確約する。同年4月以降にPCBが見つかっても室蘭での処理は行わない」と強調した。

 同省は2月、市は5月に住民説明会や意見交換会を計6回、道の担当者を交えて開き、4月には市がホームページで市民の意見も募った。青山市長は国定政務官らとの意見交換後、「受け入れるか否かは新たに条件を示した上で、議会での議論を踏まえて判断する」と述べた。(松本英仁)