【日本三大競漕の祭り】和歌山「熊野速玉大祭」・広島「ひがしの住吉祭」・沖縄「糸満ハーレー」:男たちの誇りをかけた水上の熱戦

AI要約

日本全国にある祭りの中から、水上レースを特集。古式の船で行われる競漕の祭りについて紹介。美保神社の諸手船神事から始まり、神秘的な雰囲気が広がる熊野速玉大祭の御船祭まで、豊漁・豊作を祈る行事の魅力を伝える。

古式の船で迫力の水上レースが行われる日本の祭り。櫂船を漕ぐ神事が次第に白熱した競漕へと発展し、地域の連帯感を醸成する。日本各地で見られる櫂船のレースの魅力を探る。

瀬戸内から沖縄まで、日本各地に根付く水上レースの祭り。船の速さを競うことで大漁や五穀豊穣を祈る伝統行事の魅力を体験しよう。

【日本三大競漕の祭り】和歌山「熊野速玉大祭」・広島「ひがしの住吉祭」・沖縄「糸満ハーレー」:男たちの誇りをかけた水上の熱戦

芳賀 日向

日本全国にあまたある祭りの中から、ジャンル別の御三家を取り上げるシリーズ企画。今回は、古式の船で迫力の水上レースを繰り広げ、豊漁・豊作を祈る行事を紹介する。

海に囲まれ、川や湖沼も多い日本には、船の速さを競い合う「競漕(きょうそう)」の祭りが各地にある。古いものでは出雲の国譲り神話に由来する美保神社(島根県松江市)の「諸手船(もろたぶね)神事」が有名だ。多人数で櫂(かい)を操る諸手船に乗って、天上からの使者が美保関の事代主(ことしろぬし、別名・えびす)に会いにきた場面を再現、大漁や五穀豊穣(ほうじょう)の感謝をささげる。

大勢で船を漕(こ)ぐ神事は、各地で次第に白熱したレースへと発展した。他には沖縄のハーリーなど、中国から東アジアに広がった「爬竜船(はりゅうせん)競漕」をルーツとする行事が根付いている。

櫂船は1人でも技量が劣っていたり、怠けたりすると速く進まない。ベテランが若者に技術を教えながら練習を繰り返し、一心同体になることが必要で、氏子の連帯感を強めることにもつながっているのだ。神事であり、地域の誇りをかけて戦う船のレースの中から、見応えたっぷりの3つを紹介する。

(新宮市、10月16日)

紀伊半島を流れる熊野川は、熊野速玉(はやたま)大社のある河口部から中流の熊野本宮大社辺りまでが「川の参詣道」としてユネスコの世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産になっている。熊野速玉大祭2日目の「御船(みふね)祭」では、その聖なる川で競漕を繰り広げる。

スタート地点は速玉大社の北東、新熊野大橋近くの権現河原。神輿(みこし)を神幸船に乗せると、9地区の代表が操る早船が一斉に漕ぎだす。1.6キロ上流の御船島を3周してから、南対岸にある乙基(おもと)河原にゴール。

16~17分のレース中、 1人が漕ぐ回数は600回にも及び、力強く水をかく「ギッ」という音が両岸に響き渡る。インコースの奪い合いで船体が激しくぶつかり合い、迫力満点だ。

早船は折り返して再び競漕を始め、遅れて神幸船が乙基河原に到着する頃には、辺りは薄暗くなっている。真新しい杉の葉で作った仮宮に神霊を迎えると、かがり火の中で「神鎮めの舞」などの儀式が執り行われ、激戦から一転、神秘的な雰囲気が広がっていく。