出産間近でようやく保護、「飼い主」戻らぬ被災地で取り残される「地域猫」 続く支援活動 能登半島地震

AI要約

被災地で地域の人々がかわいがっていた地域猫が保護された。被災者が移動する中、動物保護活動は継続。チャミちゃんは20キロ離れた場所で保護され、里親捜しを始める。

猫の飼育は中外飼いが主流で、チャミちゃんも地域の人々にかわいがられていた。安部さんが保護した際に脱走してしまい、2カ月以上経って捕獲された。

地域猫たちの暮らしは人々が戻れない中で困難だが、地元の意向を尊重して支援活動が続けられる。

出産間近でようやく保護、「飼い主」戻らぬ被災地で取り残される「地域猫」 続く支援活動 能登半島地震

元日に起きた能登半島地震から5カ月。被災者の多くが二次避難先や仮設住宅へ移る中、取り残された動物たちの保護活動がなお続けられている。津波などで甚大な被害を受けた石川県珠洲(すず)市で地域の人々が世話をしていた雌の「地域猫」、チャミちゃんは5月24日、もといた場所から20キロほど離れた能登町でようやく保護。世話ができなくなった地域の人たちの依頼で今後、里親捜しを始めるという。

チャミちゃんを保護したのは兵庫県の動物愛護団体「つかねこ動物愛護環境福祉事業部」代表、安部壮剛(もりまさ)さん(49)。発災翌日から被災地に入り、地元の人々と連携して今も保護活動を続けている。

猫の飼育は「完全室内飼い」が推奨されているが、能登では家の中と外を自由に行き来させる「中外飼い」と呼ばれる飼い方が主流といい、1匹の猫には複数の「家」がある。チャミちゃんも珠洲市三崎町で地域の人たちが餌を与え、かわいがられていたという。

しかし、主に世話をしていたおばあさんは自宅が全壊したため、別の場所へ避難。世話を頼まれた人も仮設住宅へ移ることになったため3月上旬、依頼を受けた安部さんが子猫2匹とともに保護した。だが、依頼者が病院へ連れて行こうとした際にチャミちゃんはケージをこじ開けて脱走してしまい、安部さんは再び保護を頼まれたという。

脱走したのは、地震の被害が大きかった能登町松波付近。人がほとんど戻っておらず、家の中と外を自由に行き来していたとはいえ、土地勘もないうえ妊娠中のチャミちゃんが生き延びるのは厳しいことが予想された。安部さんはチラシを千枚以上作成し、バス停にも貼るなど幅広い地域で配布したが、目撃情報はなかった。

脱走から2カ月以上たった先月下旬、安部さんが支援物資を届けた同町白丸の農家の男性から「3日前から新しい『赤トラ』の猫が倉庫に来ている。ひょっとしたらチラシの猫かもしれない」との情報があり、地元の協力を得て捕獲機やカメラを設置。24日、脱走した場所から5キロほど離れた同町内浦で、ようやくチャミちゃんを保護した。出産間近とみられ、世話をしていた人たちの意向で安部さんの団体で保護、里親捜しを進めるという。

「被災地で地域の人たちがかわいがって世話をしてきた地域猫たちも、人々が戻れない中では、元の地域で暮らし続けるのは難しい」と安部さん。「地域の方の意向を尊重しながら、できる限りの支援を続けたい」と話した。(木村さやか)