好決算の生保に「国際会計基準の見直し」を映した明暗…保険料収入減でも増益のなぜ
生命保険会社の決算が好調で、増益を達成した事例を取り上げた。
保有株式の売却や国際会計基準の変更によって利益を押し上げた背景を明らかにした。
保険料収入の増減によって生保の業績を読み解き、競争力や商品力の重要性を考察した。
【政官財スキャニング】#77
官界通(以下=官) 前回は上場企業の決算が好調だったことを取り上げたが、上場していない会社も多い生命保険会社も大幅な増益だったな。
財界通(同=財) そうだ。業界最大手の日本生命も株式会社ではなく相互会社という形だが、決算内容は公表している。それによると、今年3月期の本業での儲けを示す「基礎利益」は前期より60%余り増えた。
政界通(同=政) すごいな。
財 業界2番手の第一生命は40%以上増えたし、3番手の明治安田生命も約40%増だ。
官 でも、生命保険の契約で得た保険料収入には、明暗がみえた。日生は前期比で約35%増だが、第一は約13%増、明治安田は約9%減だった。
政 えっ、保険料収入が減っても増益になるのか?
■保有株式を売却
財 一つは、コロナ禍が収まって入院給付金などの支払いが減り、利益を押し上げた。もう一つが重要だ。各社は、利益が出ている保有株式をけっこう売ったようだ。
政 利益を膨らませるために、お宝の「含み益」をはき出したのか?
官 いや、利益を膨らませるためではなく、株式を持ち過ぎているからではないか。
財 さすが、霞が関の官僚に接していると、情報が早いな。実は保険会社の国際会計基準が見直され、運用している総資産に占める株式の比率の上限が下げられる。株式への運用が多い生保はかなり売る必要があり、徐々に売っている。
政 どの銘柄をどれだけ売ったかは、分かるのか?
財 それは発表されないが、生保は多くの会社の大株主になっているから、大株主の変動をみればある程度はつかめる。そのうちにアナリストが分析してくれるだろう。
官 比率は、株式を減らさなくても、総資産のほうを大きくすれば下がる。総資産を増やす王道は、保険料収入を増やすこと。それには保険を売るしかない。
政 そうか、資産運用の時代で、節税型保険や利回りのいい保険は売れる。保険料収入が増えない生保は、いい商品がないか販売力が足りないのか。明暗がみえるというのは、そういう意味か。
(構成=竜孝裕/ジャーナリスト)