山形・鶴岡でおなじみの味「サクラマスのあんかけ」…ポイントはとろみが強いあん、練って練って練りまくります

AI要約

サクラマスを使った郷土料理「サクラマスのあんかけ」の味や作り方、そして孟宗汁など地元の味を楽しめる山形県鶴岡市の小料理屋を紹介。

伝統的なあんの作り方や鶴岡の文化について紹介し、春の味覚にこだわる女将の情熱も伝えられている。

さらに、サクラマスや孟宗汁が楽しめる期間や、次の旬の幸を求めて訪れる人々の様子も述べられている。

 山形の県の魚は、サクラマスだ。生まれた川を下って日本海に入り、山形で桜が咲く頃に故郷の川に戻ってくる。身の色は上品な桜色で、雪深い庄内の人が待ちわびた春を告げる魚だ。

 季節の庄内料理を提供する山形県鶴岡市の小料理屋「いな舟」で、代表的な郷土の味「サクラマスのあんかけ」(900円)を頼んだ。

 女将(おかみ)の山口貴(あつ)子(こ)さん(59)は、母から継いだ味を守り続けている。「家庭料理そのままですが、最近は家で作らないからとわざわざ食べに来る方もいます」

 料理のポイントは、あんにある。味は、みたらし団子のしょうゆだれによく似ていて、とろみが強い。

 あんは、水、酒、しょうゆ、砂糖を煮立て、水で溶いた片栗粉を加えて作る。火を止めてからが、あんの出来栄えを決める。

 「あんを練って練って練りまくる。よく練らないと照りが出ない。昔は『あんかけが作れないと嫁に行けない』と言われました」

 鶴岡では祝いの席にあんは欠かせず、街であんを練る専用の木べらが売られていたほどだという。

 サクラマスを蒸して、ごま豆腐、そうめんと一緒にお皿に載せ、再びアツアツにしたあんをかければ完成だ。ふっくらしたマスの身と、甘じょっぱいあんの意外な組み合わせが、実にうまい。付け合わせはニラ、煮卵、ゆり根などがあり、家によっても違う。

 追加でもう一品、春の定番でみそと酒かす仕立ての「孟(もう)宗(そう)汁」(500円)をいただいた。主役のタケノコは「地物の朝採りならアク抜きなしで、甘くパリッとした食感が楽しめます」。

 鶴岡でサクラマスや孟宗汁が楽しめるのは庄内三大祭りの一つ「大(おお)山(やま)犬(いぬ)祭り」が行われる6月初めまで。その後は岩がきやもずく、スルメイカなど、次の旬の幸が待っている。

 ※税込み。記事中の値段などは紙面掲載時のものです。

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