「森林環境税」6月から1人年額1000円徴収 森林整備目的の交付金4割使われず…「無駄増やしてほしくない」厳しい意見も

AI要約

2022年度から導入される森林環境税について、1人当たり年間1000円が徴収される計画で、使途に議論が巻き起こっている。

これまでの森林環境譲与税の活用状況にも触れ、国内の森林整備に関する課題や議論を紹介。

専門家の見解や自治体の取り組み、人材育成の重要性についても解説されている。

「森林環境税」6月から1人年額1000円徴収 森林整備目的の交付金4割使われず…「無駄増やしてほしくない」厳しい意見も

6月から導入される「森林環境税」。1人当たり年間1000円徴収されるものだが、その使い道が議論になっている。

6月から始まる新しい税金「森林環境税」とは、国内の森林整備を目的としたもので、納税義務者約6200万人から、1人年間1000円徴収され、年間で約620億円の税収が見込まれている。住民税に上乗せする形で徴収し、国に納められた後、都道府県や市町村に配分される。

森林整備を目的とした交付金は、2019年度から「森林環境譲与税」として始まっていて、国庫から各市町村に配布されている。森林の面積が大きい静岡・浜松市では、2022年度分の交付金を森林整備に加え、整備に関わる人材の育成などで使い切った。

一方で、人工林の面積がゼロの東京・渋谷区は、開始から5年間で9857万円が配布されたが、使用したのは2023年に公共施設を建て替えた際の900万円のみで、残りの約9000万円は使われず眠ったままになっている。渋谷と同様に使いきれない状況は他の市町村でも確認されていて、各市町村に4年間で配分された約1280億円のうち、約4割に当たる494億円が使われずにいる。

こうした中で新たに導入される森林環境税について、納税者からは賛否の声が聞かれた。

「何のための税金?取られたくないよね」(70代女性)

「それがどんどん増えていったら厳しい。あまり無駄な使い道を増やしてほしくない」(40代女性)

「森林がないところだったら、あるところに譲ればいいし、うまく融通きかせればいい」(60代男性)

疑問点が多い森林環境税だが、国民の1000円はどのように活用されるのか、今後の課題は何なのか、森林整備の政策に詳しい東京経済大学の佐藤一光教授に話を聞いた。

まず、「1000円上乗せ」というと、復興特別税を思い浮かべた人もいるかもしれない。復興特別税は、2011年に起きた東日本大震災を受けて2014年から復興を目的に、個人住民税に年間で1000円上乗せされて徴収されていたが、2023年に終了した。このタイミングで森林環境税の徴収が始まるわけだが、佐藤教授は、国民への負担に配慮しているといえるとの見方を示している。

「2019年から既に森林環境譲与税の交付が始まっています。ですので、そのタイミングで増税するのではなく、今の復興特別税の1000円がなくなったというタイミングで増税するのは、ある意味では負担に対する配慮と言うことができるでしょう。しかし、このタイミングでの増税というのは、復興増税してその分の税収を下げるのが嫌だから、そのまま残しておこうというふうに疑われても仕方がないと思います」

ただ、課税方法については問題点があると指摘する。

「森林を整備していく、再造林をしていくということは、カーボンニュートラルなどを考えると、とても大切な分野になってくるわけですね。ただし、100億円所得がある人も200万円の所得の人も1000円というのは不公平。逆進的と言って、非常にダメな税金のタイプだというのは、ほとんどの専門家がそう思っているはず。その上で、カーボンニュートラルだったらカーボンタックスの方がいいんじゃないかということなんですよね」

一方、2019年から既に始まっている森林環境譲与税が、これまで4年間で約1280億円配分されたうち39%の494億円が活用されていないという状況については、次のように説明した。

「活用されていないというと、やや誤解があります。例えば都市部で使う時には、学校や図書館などの公共施設を国産の木材を使って建て替えたり、改築したりしようと、そのために貯めているんですね。実は自治体は、日常的にインフラを整備するためのお金を貯めていて、未活用と言っていますが、将来のために貯めているという面があります。

森林環境譲与税が森林がない自治体にも交付されているのは、国内の木をうまく使ってほしいということなんです」

では、逆に森林が多い自治体ではうまく活用できてるのか。

「今どれぐらい積み立てているのかというので、森林が多い自治体と少ない自治体があるんですが、現在のところ森林が多い自治体では1%ぐらいの自治体が積み立てていて、少ない自治体は20%ぐらいの自治体が積み立てているので、やはり少ない自体の方がうまく使えていないという実情はあります。

ただし、森林の多い自治体でも林業担当の方がいないというパターンがあって、この場合うまく使えていないということがあります」

実際に、人材不足で活用できていないというケースもある。愛媛・大洲市では、分配された金額のうち2億円は活用したが、1億2000万円は積み立てているという。大洲市の担当者によると、森林業者などが少ないということで、整備することよりも、まずは人材育成の場を作ることを計画しているそうだ。佐藤教授も人材育成の重要性を強調している。

「人口減少の日本ですから、これから人に投資していくことがとても重要になってきます。林業は、賃金が低いが、危険度が高くて事故も多く、非常にハードな仕事。これを魅力のある仕事にしていく。このためにお金が使えると、ちょっと未来の明るい日本になるんじゃないでしょうか」

(「イット!」5月29日放送より)