「隣の空き家が朽ち果てて困っています」撤去してもらうためにはどうすればよいか、弁護士が解説

AI要約

空き家問題に関する法的な解説。隣の空き家が朽ち果てている場合の対応や自治体の役割について述べられている。

空家等対策特別措置法に基づき、管理不全空家や特定空家の認定が行われ、所有者に対する措置や行政代執行が可能であることが説明されている。

住民の協力や市有地での対応など、具体的な解決策が提案されている。

「隣の空き家が朽ち果てて困っています」撤去してもらうためにはどうすればよいか、弁護士が解説

 全国的に深刻化している“空き家問題”。もしも隣家が長年放置されて朽ち果てていた場合、自治体に頼んで撤去してもらうなど対応してもらうことはできるのか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。

【質問】

 10年以上前から隣が空き家になっています。土地は市のものらしいのですが、以前、土地を借りていた隣人が建てた家の窓ガラスが割れたり、ドアが壊れたりして朽ち果てています。防犯上もよくないのでなんとかしてほしいのですが、隣人の行方がわかりません。役所に頼んで、家を撤去してもらうことはできるのでしょうか。(栃木県・60才・主婦)

【回答】

 空家等対策特別措置法では、次のような呼称と定義があります。

「特定空家等」…放置すると倒壊などの危険性が著しい、など4つの状態の空き家。

「管理不全空家等」…「特定空家等」の一歩手前で、適切な管理がないことにより、放置すれば特定空家等になるおそれのある空き家。

 管理不全空家になると、市町村長により国が定める基本指針に従った防止措置を取るように指導され、指導に従わない場合は勧告を受けます。勧告を受けるような建物では住居利用が難しいので、その敷地は住宅用地とはいえないことから、住宅敷地の税金を安くする住宅用地特例の適用がなくなり、敷地の固定資産税が大幅に増える不利益を受けます。

 それでも管理不全状態が続き、特定空家になると、市町村長は所有者に対して、除却、修繕、立木竹の伐採等の措置を取るよう助言または指導します。改善されないときは勧告し、それでも正当な理由なく従わないときは、弁明の機会を与えたうえでこれらの措置を命じることができ、命令に従わなければ、行政代執行(強制執行)できます。

 こうした管理不全空家や特定空家の認定を受けるためには、市町村の独自の調査を待っているだけではだめで、空き家情報を役所に提供し、現地確認を求めることが必要です。

 その後は役所の判断になりますが、ご質問の場合、防犯上の懸念ですから、特定空家の要件のうち「その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態」にあるかが問題になります。

 認定には、悪影響の大きさと危険の切迫性が重視されるので、不審者情報などのほか、空き家の周辺住民の不安が大きいことが考慮要因になります。近所のかたを募って働きかけるのがよいと思います。

 役所の腰が重い場合、その隣家の敷地が市有地であることに注目しましょう。隣家の持ち主は市から土地を借りているとのことですが、10年以上も管理を放棄しているのですから、地代の支払いもないでしょう。市は賃貸借契約を解除して建物の取り壊しを請求できます。市に対し、こうした権利を行使して、地域住民に迷惑が及ばない市有財産の適切な管理をするように求めてはいかがですか。

【プロフィール】

竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型。

※女性セブン2024年5月30日号