衆院で政治資金規正法の改正議論が始まる:政治とカネの問題解消には遠く

AI要約

自民党派閥の政治資金問題を受けた政治資金規正法改正の議論が進行中。自民党案と野党共同案、日本維新の会案の3つの提案があり、公明党との共同提案が難航している。

自民党は議席数には優位だが、公明党との関係が緊張しており、野党の協力が必要。しかし、改正案には意見の相違があり、可決が不透明で会期延長も検討されている。

収支報告書の議員責任と罰則、政治資金パーティ券購入者の開示基準、政策活動費の取り扱いが争点。自民党案、野党共同案、日本維新の会案ともに大きな違いがある。

衆院で政治資金規正法の改正議論が始まる:政治とカネの問題解消には遠く

自民党派閥の政治資金問題を受けた政治資金規正法の改正議論が、5月22日の衆院政治改革特別委員会で始められた。自民党案と立憲民主・国民民主による共同案、日本維新の会の案の計3案が、国会にそれぞれ提出されている。

自民党にとって大きな誤算であったと考えられるのは、公明党との共同案の作成に失敗したことだ。両党は連立与党でありながら、政治資金パーティ券購入者の公開基準などで、意見の隔たりを埋めることができなかった。この問題では、自民党と距離を置きたいとの思いも公明党にはあるのではないか。

自民党は衆院では単独過半数の議席を持っているが、参院では公明党を除くと過半数に満たない。政治資金規正法の改正では、自公の協力関係が崩れてしまったことから、自民党は野党の意見を取り入れ、野党案に妥協しなければ改正案を可決できない状況だ。しかし、与野党間の意見の隔たりは大きいことから、6月23日の今国会会期末までに法案を可決できるかどうかは不確実だ。会期延長も視野に入ってくる。

改正案の審議では、1)収支報告書の議員の責任と罰則(連座制)、2)政治資金パーティ券購入者の開示基準、3)政策活動費の扱い、の3点が大きな争点となるが、現状ではいずれも3案ともに大きく異なっている。

政治資金収支報告書については、3案ともに、会計責任者が不記載などで処罰された場合には、議員本人も処分対象となる、いわゆる「連座制」の要素を取り入れている。

自民党案では、議員に、政治資金収支報告書の内容を確認したことを示す「確認書」の提出を義務づける。会計責任者が不記載などで処罰され、かつ議員が必要な確認を怠った場合には、議員に50万円以下の罰金が科され、公民権も停止となり議員を失職する。

立民・国民民主案は、会計責任者だけでなく議員にも収支報告書の記載と提出を義務づけ、議員により強い当事者責任を負わせる。確かに自民党案では当事者責任は弱く、「確認したが会計責任者の不正を見抜けなかった」と主張すれば、議員は処罰を免れることができる可能性があるのではないか。