ほぼ強制? ケータイや預金、NISAまで…マイナンバーカードの“義務化”と政府の狙い

AI要約

政府がマイナンバーカードを携帯電話契約時の本人確認に一本化する方針を打ち出し、金融業界でもマイナンバー活用の拡大が進んでいる。

国民からはマイナンバー義務化への反対や不信感が広がっており、強制化への懸念も出ている。

政府の取り組みや国民の反応を踏まえ、今後のマイナンバーカードの利用範囲が広がる可能性がある。

ほぼ強制? ケータイや預金、NISAまで…マイナンバーカードの“義務化”と政府の狙い

 携帯電話契約時の本人確認の方法について、国がマイナンバーカードに一本化する方針を打ち出し、波紋を広げています。預金口座開設やNISA継続利用者の本人確認についてもマイナンバー活用の拡大に向けた議論が進んでいますが、その範囲はどこまで広がるのでしょうか? 本稿では、政府が掲げる「大義」や金融業界での議論、利用者である国民の反応などについて現状をまとめます。

 政府がこの6月の犯罪対策閣僚会議でとりまとめたのが、「国民を詐欺から守るための総合対策」です。

 この中で「犯罪者のツールを奪うための対策」として、携帯電話不正利用防止法、犯罪収益移転防止法に基づく非対面の本人確認手法を今後、マイナンバーカードの公的個人認証に原則一本化する方向性を提示しました。

 これまで主流だった運転免許証や、顔写真のない健康保険証などの利用を取りやめにすることにしたのです。

 この部分がSNSで注目を浴び、「運転免許証を身分証明として使える道をどんどん削っていくことで嫌でもマイナンバー義務化になります」といった批判が巻き起こりました。

 また、「任意としてはじめたものを、持っていないとできないことを増やすのは詐欺ではないのですか」といった辛辣な声もありました。

 対面の本人確認でもマイナンバーカードなどのICチップ情報の読み取りを義務付けるとともに、ICチップ読取に使うアプリなどを開発するといった方向性が盛り込まれています。

 「総合対策」の中でもう1つ注目を浴びているのが、「預貯金口座等に関する対策」の中の「預貯金口座の不正利用防止対策の強化等」という項目です。

 不正に譲渡・開設された預貯金口座が犯罪者グループ内での金銭の授受に用いられていることを踏まえ、預貯金口座利用時の取引時確認を一層厳格化する方針を提示しています。

 この方針に則り、この8月には金融庁と警察庁が連名で預貯金口座の不正利用等防止に向け各銀行協会あてに要請を発表しています。

 携帯電話の契約時の、「犯罪収益移転防止法に基づく非対面の本人確認手法」は、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化し、運転免許証などを送信する方法や、顔写真のない本人確認書類は廃止するとしています。

 預金口座をめぐっては本人確認の作業のほかに、すでに口座の情報そのものをマイナンバーと紐づけるよう促す制度改正も推進されています。

 この2024年4月に施行された「預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律」(口座管理法)では、金融機関に対し、マイナンバーを預貯金口座と紐付けるかどうかについて預貯金者の希望の有無を確認するようルールを設けました。

 紐づけミス問題で不信感が高まっていることもあり、ネット上では口座開設時のマイナンバーカード利用の「強制化」ではないかとの観測が飛び交いました。

 厳密にいえば義務が生まれるのはあくまで金融機関側であり、実際に紐付けるかどうかはあくまで預貯金者の任意、つまり強制力はないという立て付けになっていますが、義務化に対する反発の大きさを印象づける結果となりました。