【日銀会合目前!】植田総裁がまねいた「8月大暴落」の最大の原因を解説――あのとき「決定的に間違っていたこと」、再暴落を防ぐために「教訓とすべきこと」
8月に起きた株価の大幅な下落の要因について議論されているが、日本銀行の植田総裁による追加利上げ宣言が最大の要因であると考えられる。
市場が植田総裁の発言に不安を覚え、株価が動揺したことが根本的な原因である。
アメリカ経済の変調やハイテク株の不振も要因として挙げられていたが、植田総裁の発言が株価下落を招いたことが明確である。
今週の9月19日、20日と、日本銀行の政策決定会合が行われる。そこで認識していただきたいのは、なぜ8月はじめに大幅な株価下落が起こったかだ。
この下落は1987年10月19日月曜日にニューヨーク株式市場で起きた20%の大暴落、ブラックマンデーを想起させるものだった。
7月31日の日経平均から考えると、底値の8月5日には20%下落した。その後回復して9月3日にはほぼ7月末の水準に戻ったが、9月になってから下落している。9月はじめからの下落は、アメリカの冴えない景気指標、ハイテク株の下落によるニューヨーク市場の不振の影響だろうが、ここで議論したいのは8月の動きだ。
この下落の要因としては、次の3点が要因として議論されていた。
1.アメリカ経済の変調
2.ハイテク株の不振
3.植田総裁による追加利上げ宣言
果たして、どれが正しかったのだろうか。
しかし、第1のアメリカ経済の変調が原因だというのは無理がある。
なぜなら、日経平均が下がった後、NYダウが下がったからだ。また、その低下率も、日本が20%なのに、アメリカは5%でしかない(7月31日から8月5日の変化)。後から起きたことが前に起きたことの原因だというのは無理がある。また、地震は震源地から離れたところに、弱くなりながら伝搬していく。大きくなって伝わるというのも通常はあり得ない。
経済ショックも同じだろう。ただし、地震の場合なら、地盤の固いところで起きた地震が地盤の弱いところでより大きな揺れになることはある。経済の場合もそうだというのなら、そのメカニズムをしっかりと説明すべきだ。
第2の米ハイテク株の不振が日本に影響を与えるというのはありそうなことだが、これも増幅のメカニズムが良く分からない。
明確なのは第3の植田和男日銀総裁が7月31日、金融政策決定会合後の記者会見で、今後も経済・物価情勢が見通し通りに推移していけば追加利上げしていく方針を示し、政策金利について2006年からの前回の利上げ局面のピークである0.5%が「壁」になるとは「認識していない」という発言である(東京31日ロイター)。
もちろん、曖昧な言い方はしているが、ほとんど決められたスケジュールに則って、金利を引き上げていくと解釈されたのだろう。
市場が動揺した後の8月7日、内田真一日銀副総裁が「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」と発言したことで(「日銀、利上げ戦略に誤算 株安・円高に直面」時事2024年8月9日)、株価はやや持ち直した。この経緯を見ても、植田発言が株価下落の要因であることは間違いないだろう。
ハンドルを右に動かしたら右に動いたが、元に戻しても左に動かなかったら、ハンドルを右に動かしたことが原因ではなく、たまたま偶然、車が右に動いただけかもしれない。
しかし、元に戻して左に動けば、ハンドルを右に動かしたことが原因だと判定できる。