有名ブランドが「公式中古販売」に続々参入。“新品売れなくなる“は間違いだった

AI要約

ブランド品の中古流通が増える中、ブランドが公式リユース品販売に注目し始めている。

リユース品を販売することで新規顧客獲得やファン拡大を狙うブランドも増加している。

スタートアップ企業がブランドの中古品販売を支援するサービスも登場し、需要の変化に対応している。

有名ブランドが「公式中古販売」に続々参入。“新品売れなくなる“は間違いだった

ノースフェイス、クリスチャンディオール、グッチ──メルカリを始め、フリマアプリでは日々多くのブランド品が流通する。

かつては中古品は、「誰かが着たものに抵抗がある」「購入するのが恥ずかしい」と捉えられることも多かったが、市場の拡大に伴い、二次流通で取引される物量も増えた。その流通量は、商品を製造しているブランドにとっても看過できないほどになってきた。

こうした中、ブランドによる「公式リユース品販売」が注目され始めている。自社ブランドの商品を回収して自社の販売チャネルで再流通させることで、価格を抑えながらも品質を確保し、新規顧客の獲得やファン拡大につなげる狙いがある。「新品が売れなくなる」という懸念から参入をためらうブランドも多いが、いち早く取り組んだ企業では成果も見えてきた。

「メルカリやヤフオクなどのサイトでお客様が売買されているのは会社としても把握していたので、『需要はあるかも』という話はしていました」

フランスのほうろう鍋ブランド・STAUB(ストウブ)は、2023年9月から公式リユースストアを立ち上げて自社商品の中古品販売を始めた。ストウブを扱うツヴィリング J.Aヘンケルスジャパンで同事業を担当する野田裕子さんは、ストウブの中古品再販を始めた経緯を冒頭のように話す。

8000円分のクーポンと引き換えに、ユーザーから中古品を下取りする。商品のうち再販可能な基準に達したものを、専用のオンラインストアで定価の約5割~6割程度の価格で再販する。

「リユース商品を買っていただいてる方の7割近くが弊社にとって新規のお客様。かなり新規率の高い販売チャネルになっています」(野田さん)

この公式リユースサイトの裏側を担っているのが、2020年創業のスタートアップ・フリースタンダードだ。ブランドが公式リユース品を販売するにあたって、回収した商品の査定から真贋判定、クリーニング、再販までの全てを一気通貫で請け負うサービス「Retailor(リテーラー)」を提供する。

同社の張本貴雄社長は元々、ファッションECサイト・ショップリストを立ち上げて社長まで務めた人物だ。ショップリストはセール率の高さが強みのプラットフォームだが、それと比較するとリテーラーは対照的な事業にも映る。

張本社長は

「(ショップリストでは)売上高としては満足いくものをブランドにお返しできたとは思っているが、結果として利益が残らないという課題は感じていた。プロパー消化率(定価で販売した割合)が上がらない時代になり、確実にモノが余っている中、顧客のライフタイムバリュー(※)を伸ばすべきという思いがビジネスの根底にあった」

と話す。

※ライフタイムバリュー…顧客が自社と取引を開始してから終了するまでの間に、自社にもたらす利益

そこで立ち上げたのが、ブランドが新品だけでなくリユース品も自社で販売することで、一つの商品で複数回利益を得られるサービスというわけだ。

リテーラーの強みは、新品の商品を作って販売する一次流通企業が、簡単に二次流通に参入できるところにある。

一次流通企業にとって、二次流通まで事業を広げるのは簡単ではない。

張本社長は

「同じSサイズのTシャツだったとしても、1回販売して回収した商品は全て状態が異なります。下取り価格も再販価格も違うので、1点1点管理しなければいけません。一次流通のブランドは1点ごとに管理する仕組みを持っていないので、自社構築しようとするととても大変」

と説明する。