米ドルの「売られ過ぎ」が懸念されるなか…米雇用統計発表後の〈米国株の急落〉が意味すること【国際金融アナリストが解説】

AI要約

米ドル/円は急落し、8月安値に近づいたが、修正の可能性もある。

米金利低下が続き、2年債利回りの下がり過ぎ懸念もある。

短期的な下がり過ぎシグナルが出ており、今週の相場は140~145円で予想。

米ドルの「売られ過ぎ」が懸念されるなか…米雇用統計発表後の〈米国株の急落〉が意味すること【国際金融アナリストが解説】

最大5円以上の急落と、8月に起こった「令和のブラックマンデー」に肉迫する動きをみせた、9月初週の米ドル/円。マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は、今週の相場展開について、「“下がり過ぎ”の修正が入る可能性がある」といいます。その根拠について、本記事で詳しくみていきましょう。

<ポイント>

・先週の米ドル/円は最大5円以上の急落で、一気に8月安値の141.6円に肉迫した。

・引き続き、米国の大幅かつ連続利下げの可能性を探りながら「米金利低下=米ドル安」の模索が続きそうだが、短期的な「行き過ぎ」シグナルも目立ってきた。

・一気に140円割れは難しく、いったん「行き過ぎ」の修正が入る可能性もありそう。今週の米ドル/円は140~145円で予想。

先週の米ドル/円は、前半は147円台まで上昇する場面もありましたが、週末に注目された米8月雇用統計が発表されたあとは一時141円台まで下落、最大で5円以上もの急落となりました。

8月5日、「令和のブラックマンデー」と呼ばれた世界同時株暴落で記録した、141.6円に肉迫する動きとなったわけです(図表1参照)。

ところで、こうした米ドル/円の急落は、基本的には、日米金利差の「米ドル優位・円劣位」の縮小に沿ったものでした(図表2参照)。

米8月雇用統計のNFP(非農業部門雇用者数)をはじめ、予想より弱かった経済指標に米金利が敏感に反応し、米ドル安・円高が広がったといえます。

では、この「米金利低下=米ドル安」は、今週どのように展開するのでしょうか。

米2年債利回りはやや「下がり過ぎ」

米金融政策を反映する2年債利回りは、先週3.6%台まで低下しました。これは、政策金利であるFFレートの誘導目標上限の5.5%を、1.8%以上と大幅に下回るものです。

ちなみに、2000年以降で、FFレートに対する米2年債利回りの下方かい離が最大となったのは、2008年1月の1.9%です。先週は、これに近づく大幅な下方かい離となりました(図表3参照)。

その意味では、米2年債利回りはやや「下がり過ぎ」の懸念があります。

また、米ドル/円の90日MA(移動平均線)かい離率は、6日には、マイナス7%以上に拡大しました(図表4参照)。

同かい離率は、マイナス10%に近づくと短期的な「下がり過ぎ」懸念が強くなります。米ドル/円も、やや短期的な「下がり過ぎ」が懸念されているといえそうです。