ビットコインETF、国内実現は? 組成へ動きだす金融業界、政府は慎重姿勢【けいざい百景】

AI要約

暗号資産ビットコインの上場投資信託(ETF)が米国で承認され、国内でも動きが出ている。価格上昇や潜在的な投資家層の拡大が期待されるが、政府は慎重姿勢を保持。

米国のビットコインETFは大成功と評価されており、日本でも運用会社や交換業者が動き始めている。ETF化により暗号資産への投資が容易になる見通し。

国内政府や関連団体は、暗号資産ETFの課題やメリットを考慮した政策検討を進めつつ、国内実現に向けた取り組みが進行中。

ビットコインETF、国内実現は? 組成へ動きだす金融業界、政府は慎重姿勢【けいざい百景】

 暗号資産(仮想通貨)ビットコインの上場投資信託(ETF)が1月に米国で承認され、人気を集めている。国内でも金融業界などで組成に向けた動きが出ている。一方、価格変動の大きさや悪用への懸念もあり、政府は慎重姿勢を見せる。国内実現に向けた課題を探った。(時事通信経済部 岩嶋紀明)

◆米国で「大成功」

 米証券取引委員会は1月、資産運用大手の米ブラックロックの関連会社など11事業者のビットコイン現物ETFを承認した。米国のほかカナダやドイツ、香港などでも上場されている。ビットコインの価格は高騰。1月の承認前は1BTC=600万円台前半で推移していたが、3月上旬に初めて1000万円台を突破し、5月には1100万円台を付けた。

 楽天ウォレット(東京)の松田康生さんは、米国でのビットコインETFは大成功だったと評価する。「これまで暗号資産に投資できなかった年金基金などの機関投資家や企業もETFを介して保有するようになった」と指摘。日本で承認されれば、機関投資家などが参入でき、暗号資産から距離を置いていた中高年層も加わり、投資家の裾野が広がる効果を見込む。

 ETFにする利点は、暗号資産への投資が容易になることだ。証券会社の口座から株式や他のETFと同じように購入できるようになる。現状では暗号資産交換業者の口座を新設するなどの手続きが必要。資産を自己管理する場合はセキュリティー対策なども求められる。

 ETF化すれば税制上のメリットもあり得る。現物の暗号資産を売買して利益が生じた場合、現状では雑所得として総合課税の対象となり、最大55%の税率が課せられる。ETFなら株式などと同様、申告分離課税の対象となり20%の税率で済む見込み。

◆国内実現目指す動き

 国内でも暗号資産ETFの組成を目指す動きが具体化してきている。交換業大手のビットフライヤーホールディングス(東京)は6月、2022年に経営破綻した同業の米FTXトレーディングの日本法人の買収で合意したと発表した。同法人の既存口座はビットフライヤーへ移管した上で、社名を変更し、法人向けの暗号資産預託事業や、暗号資産ETF関連のサービスを展開していくと表明した。

 SBIホールディングスも7月、米国でビットコインETFを提供しているフランクリン・テンプルトンと共同で運用会社を設立すると発表。朝倉智也副社長は、新会社はデジタル時代の新たな金融商品の開発・提供を目的としており、暗号資産ETFはあくまでも「候補の一つ」にすぎないとしつつ、将来性や成長性を高く評価。「アセットアロケーション(資産の運用先)の一つとして有効。当局も無視できなくなってくるはずだ」と強調した。

 自民党のデジタル社会推進本部は4月に公開した提言書で、暗号資産を投資対象とするETFを許容しないことが果たして適切な政策であるのかが問題となると明記。関連業界に対して、論点を整理するとともに国民的理解を醸成する取り組みを検討した上で、法改正を働き掛けるよう促した。