パレードの通り道で子どもがケガ、「驚きの対策法」を編み出したディズニーランドの問題解決フレームワークとは

AI要約

東京ディズニーリゾートの運営会社であるオリエンタルランドで20年間人材育成を行ってきた大住力氏が、ディズニーの人材教育の根幹をなす考え方や、人材育成の方法論について語る。

ディズニーの従業員に求められる「3つのGIVE」とは、目の前のゴミを拾う、写真を撮る、一声かけるというシンプルで重要な指針であり、新入社員にも浸透している。

「3つのGIVE」は、従業員に自己肯定感や居場所を感じさせ、働きがいを生み出す重要な戦術として長年使われてきた。

 人間には、誰にでも隠れた力や数値化できない力が備わっている――。そう話すのは、東京ディズニーリゾートの運営会社であるオリエンタルランドで20年間人材育成を行ってきた、ソコリキ教育研究所代表の大住力(おおすみ・りき)氏だ。同氏はオリエンタルランドでの経験を踏まえ、組織作りや人材育成における「ディズニーの強さ」をまとめた一冊、『どんな人も活躍できる ディズニーのしくみ大全』(あさ出版)を出版した。前編に続き、同氏にディズニーの人材教育の根幹をなす考え方や、人材育成の方法論について聞いた。(後編/全2回)

■ やりがいを生み出す「3つのGIVE」

 ――前編では、従業員の熱意を引き出し、個を生かすためのアプローチについて聞きました。オリエンタルランドでは「キャストが働きがいを感じられる取り組み」を重要視しているとのことですが、具体的にどのようなことを実施しているのでしょうか。

 大住力氏(以下、敬称略) 取り組んでいる内容はさまざまですが、例えば、ディズニーランドの創設者であるウォルト・ディズニー本人が「働きがい」を生むために従業員に求めた「3つのGIVE」を実践しています。

 それは、「Give your a step for picking up trash ahead.(目の前のゴミを拾うために、あなたの一歩をください)」「Give your one finger for taking pictures.(写真を撮るために、あなたの指を1本ください)」「Give your a call for your happiness.(あなたの幸せのためにも、一声かけてください)」というものです。

 私が新入社員の頃、これから配属先が決まるという時に人事の方から「配属先が経理部になる人もいれば、人事部、パークの現場になる人もいます。でも、全ての仕事のゴールは同じ。この3つだけは守ってください」と言われました。それが3つのGIVEです。ゴミを拾う、写真を撮る、一声かけるという内容ですから、新入社員の私も「これだけなら俺だってできる」と思いました。

 それから数年後、フロリダのディズニーで仕事をした際、ウォルト・ディズニーと一緒に仕事をしたベテラン社員から「3つのGIVEは、ウォルト・ディズニーが働きがいを生み出すために立てた戦術なんだよ」と聞いて驚きました。1つの言葉が海を渡り、長い間社員の働きがいを生み出していたのです。

 人は、褒められたり感謝されたりするとうれしくなり、同時に「自分はここにいていいのだ」と居場所を感じられます。それを促すのが「3つのGIVE」だと考えています。