【米国株ウォッチ】一時6%の急落を見せたテスラに何が起こっているのか?

AI要約

テスラの株価が下落した背景には欧州でのEV販売競争と幹部の退社がある。テスラは競合他社に対抗するために苦戦しており、幹部の連続退社も株価に悪影響を与えている可能性がある。

過去の株価パフォーマンスや最近の決算動向からは、良い面と悪い面が浮かび上がっている。諸要因により購買意欲が削がれているが、テスラの技術やビジョンには引き続き期待されている。

エネルギー事業では好調な売上げが見られるなど、テスラの将来には前向きな要素も存在している。

【米国株ウォッチ】一時6%の急落を見せたテスラに何が起こっているのか?

テスラ(ティッカーシンボル:TSLA)の株価は米国時間8月22日の取引で6%近く下落し、約211ドルで取引を終えた(編集注:記事公開時、米国時間8月26日の終値は213.21ドル)。売りが出た背景にはいくつかの事情がある。調査会社のJATOによると、7月の欧州におけるEV販売台数で、競合のBMWがテスラを上回ったという。BMWの月間販売台数が前年同期比35%の増加だったのに対し、テスラは前年同月比で16%減少した。

欧州でのバッテリーEV販売はここしばらくの間冷え込んでおり、テスラのモデル3とモデルYは欧州メーカーの新型車との競争激化に直面している。これとは別の悪材料として、テスラの財務担当副社長が最近辞任したことが挙げられるだろう。ここ数カ月で、テスラのエネルギー担当上級副社長、公共政策部長、スーパーチャージャー担当部長など、複数のトップも退社している。この退社の連鎖も株価に悪影響を与えている可能性がある。

■株価パフォーマンス

テスラ株は2021年1月初旬につけた235ドルの水準から、現在の213ドル前後の水準まで、約9%下落している。過去3年間のリターンは、2021年に50%、2022年にマイナス65%、2023年に102%だった。これに対し、S&P500種株価指数のリターンは、2021年に27%、2022年にマイナス19%、2023年に24%であり、テスラ株のリターンは2022年にS&P500を下回った。

■直近の決算動向

テスラの最近の業績からは、良い傾向も悪い傾向も見て取れる。同社は約1カ月前に2024年第2四半期の決算を発表したが、自動車関連の売上高は前年同期比で7%近く減少し、利益は42%減少した。中国などの主要市場における高金利や競争の激化、多くの国における充電網の未整備、EVのリセールバリューの低下など、いくつかの要因が潜在的な購買意欲を削いでいるようだ。また、EV市場のアーリーアダプターによる購買も飽和し、それが需要の減少につながっている可能性が高い。

しかしテスラは、整備されたサプライチェーン、優れたバッテリー技術とドライブトレイン技術、自動車に搭載するソフトウェアと自動運転技術において競合他社をリードしており、よりクリーンな輸送とエネルギーを求める声が長期的に高まり、そのことから大きな恩恵を受けるであろうことには変わりがない。

同社のエネルギー事業も良い傾向を示している。ストレージとエネルギーの売上高は前年度から倍増し、前四半期には約30億ドル(約4336億円)に達した。

こうした背景を含め、私たちはテスラの目標株価を現在の市場価格を若干上回る230ドルとしている。