92歳父の死後に60代弟2人が「家を売れ」…老父と同居の68歳長女が知らなかった有利な相続ができた“裏技”

AI要約

相続における遺言書の重要性と相続財産の分割方法についての事例が紹介されている。

相続人の意見の相違や異なる選択肢によるトラブルの可能性について具体的な対応策が示されている。

遺産分割方法や終身保険を活用する裏技など、相続手続きにおける様々なポイントが紹介されている。

 (前編より続く)

■父親が娘に迷惑をかけない“裏技”があった

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92歳だった父親と68歳の娘の夫婦のケース。父親名義の土地に、父親と娘の共有名義の二世帯住宅を建てて住んでいた。父親が逝去(せいきょ)すると、別の場所で暮らしている67歳と65歳の弟たちから、土地と建物を売却して現金化する分割協議を提案された。父親が遺言を残していなかったからだ。しかし、娘は思い出の詰まった家や土地を売りたくない。一方、祭祀の継承は67歳の長男が申し出てくれた。嫁ぎ先の姓の娘は、自分が死んだら分骨でいいので愛しい父と母が眠る実家のお墓に埋葬(まいそう)してほしいと希望していた――。

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 このケースでは、自筆証書にせよ公正証書にせよ遺言書が残されていない。こうした場合で相続人が複数人いれば、全員で分割協議を行って財産の分け方を決める。ただし、意見の相違でトラブルが生じることが想定されるため、民法では「法定相続分」として遺産の分割の目安を定めている。このケースでは姉と弟2人なので3分の1ずつだ。

 「弟さんたちが主張する、土地と建物を売却して得たお金を分割する『換価分割』されることが、実際の相続の現場では多いです。お姉さんが土地と建物を相続して、弟さんたちに現金で差額分を渡す『代償分割』もあります。しかし、土地と建物の価値が3000万円だとしたら、お姉さんに2000万円の手持ちのお金がないと、その選択肢は消えます」(水品先生)

 相続人全員が登記する「共有分割」もあるが、相続人の1人が将来に売却を希望しても、全員の同意が必要になるというデメリットが。ちなみに今年4月から不動産の「相続登記」が義務付けられ、相続したことを知ったときから3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が課せられるので要注意だ。

 また、土地や建物を「現物分割」する方法もある。このケースでは土地を3分の1ずつ、建物では父親の2分の1の遺産分をやはり3分の1ずつ、つまり6分の1ずつを3人で相続する。

 「ただし、土地の価値が目減りする可能性も。持ち分の土地は狭くなり、極小住宅が1軒しか建てられないようだと、処分しようとした際に買い叩かれます」と水品先生は注意を促す。

 水品先生は、「父親が娘に迷惑をかけない“裏技”があったのです」と囁(ささや)く。それは、娘を受取人にした終身保険に入っておくこと。保険金は相続財産から除外される。受け取った保険金から弟たちに代償金を支払えば、娘はそのまま住めたのだ。ただし、保険金の額が著しく公平性を欠いた場合等は相続財産へ持ち戻しになるので注意だ。

 結局、換価分割することになった。娘は残った分骨の願いを達成するため、二村さんの助言で供養経費の一部として30万円を長男に渡すことで、了承を得ることができたそうだ。