インド生産だからと言って甘く見てはいけない…ホンダの「210万円で乗れる新型SUV」のすごい実力

AI要約

ホンダは、今年3月22日に新型SUV「WR-V」を発売した。価格は209万円台からで、エントリーSUVながら広い車室と高い積載能力を持つ。

ガソリン車のみで、前輪駆動のみの仕様。インド生産によりコストを抑えたクルマで、高いコスパが特徴。

走りが良く、乗り心地も良い。ホンダセンシングやフルLEDヘッドライトなどの装備も充実。海外生産の新興国向け車両。

ホンダは、今年3月22日に新型SUV「WR-V」を発売した。自動車ライターの大音安弘さんは「ガソリン車のみ・駆動方式は前輪駆動のみ。さらにインド生産ということから、安いグレードは209万円台から買える。ただこの車のすごさは値段だけではない」という――。

■209万円台から乗れるホンダの新型SUV

 ホンダが2024年3月22日より発売した新型コンパクトSUV「WR-V(ダブリューアールブイ)」は、好調なスタートを切っている。

 「WR-V」の価格は、209万8800円~248万9300円と、シリーズ全体で200万円前半としている。基本的なオプションを追加しても300万円以内での購入が可能な価格帯を実現。

 月販目標を3000台としながらも、発売から約1カ月間の累計受注台数は、その約4倍の約1万3000台を記録。月販登録台数でも3月から6月までの3カ月で、1万582台と、月平均で約3530台とまずまずな数字を見せている。

 WR-Vの特徴は、ホンダのエントリーSUVながら、上位モデルとなる「ヴェゼル」と同等のボディサイズで、より広い車室と高い積載能力を備えているのが大きな武器だ。因みに最新のヴェゼルの価格は、264万8800円~377万6300円とWR-Vを大きく上回る。

 エクステリアは、直線的で力強いデザインを採用し、一目でSUVと分かるデザインに仕上げられている。ボディサイズは、全長4325mm×全幅1790mm×全高1650mmの3ナンバーサイズだが、日常的にも扱いやすい大きさで、四角いボンネットの先端が鼻先となるので、車両感覚も掴みやすく、運転もし易い。

 一方でインテリアは、派手さや華やかさとは無縁の質実剛健な作りとなっている。使い勝手は良く、小物入れなどの収納もしっかりと確保されている。

■ガソリン車、2WDのみの展開

 車内は大人5人がしっかりと乗れるスペースが確保されており、後席の足元も広め。さらにラゲッジスペースは、標準時で458Lを確保しており、後席を倒して拡大することも出来る。

 クーペライクなヴェゼルよりも室内空間がゆったりしているのは、四角いデザインの恩恵もあるが、実は、前後の車輪間の距離であるホイールベースが、40mm長いこともある。

 パワートレインと駆動方式は、自然吸気仕様の1.5LガソリンエンジンにCVTを組み合わせた前輪駆動のみで、人気のハイブリッドや降雪地でのニーズの高い4WDは、非設定だ。但し、最低地上高をクラストップレベルの195mmを確保しているので、未舗装路や段差なども全く気にならない。

 グレード構成は、エントリーの「X」、充実装備の「Z」、外観上のパーツを追加してドレスアップを図った「Z+」の3タイプを用意。

 基本的な装備も充実しており、先進安全運転支援機能「ホンダセンシング」を始めに、フルLEDヘッドライト、スマートキー、フルオートエアコン、前席サイドエアバッグ&サイドカーテンエアバッグなどを全車に標準化。

 「Z」グレード以上だと、本革巻きステアリング、プライムスムース(合成皮革)を使ったコンビシート、LEDフォグランプ、自動格納機能付ドアミラー、17インチアルミホイール、ラゲッジスペースカバーなどが追加される。

■高コスパの理由

 オーディオやナビはオプションだが、それに加え、ETC車載器とフロアマット、ドライブレコーダーなどがあれば、十分な内容となっている。

 試乗してみると、予想以上に走りが良くて驚かされた。限られたエンジンパワーをCVTが上手に引き出している感覚だ。シートのクッション性も高くて、乗り心地も良い。

 エンジン車なので、ハイブリッド車のような静かさは求められないが、ロングドライブにも出かけたくなる運転の愉しいクルマに仕上げられていた。個人的には、誰にでも進めやすい一台だと思った。

 お手頃価格の実現の秘密を解き明かしてみよう。ひとつは、海外生産の世界戦略車であることだ。同車は、タイにあるホンダの拠点で開発が進められ、インド工場で製造されている。つまり、開発費を含めたコストを抑えた新興国向けのクルマなのだ。

 ややこしいのだが、ホンダは現在、「WR-V」というクルマをアジアや南米で販売している。今回販売された「日本のWR-V」より車体がひとまわり小さい。一方で、インドでは「エレベイト」(ELEVATE)というクルマを販売している。今回はこの「エレベイト」を「WR-V」として日本で販売している。