中国の造船大手が「生産能力増強」を急ぐ思惑 世界的な造船所不足に対応、受注上乗せ狙う

AI要約

中国船舶集団(CSSC)が、生産能力の増強を急いでいるため、大型買収を発表した。

資産買収により、中国船舶重工は造船所を拡大し、船舶の生産能力を高めることを目指している。

中国の造船市場は好景気であり、需要の増加に対応するため、造船会社が積極的に生産能力を拡大している。

中国の造船大手が「生産能力増強」を急ぐ思惑 世界的な造船所不足に対応、受注上乗せ狙う

 中国の造船最大手で中央政府直属の大型国有企業である中国船舶集団(CSSC)が、生産能力の増強を急いでいる。同社の中核上場子会社である中国船舶重工は7月27日、生産キャパシティの引き上げと受注拡大を狙いにした2件の大型買収を発表した。

 1件目の買収では、中国船舶重工の孫会社である中船天津船舶製造が、(CSSC傘下の国有造船会社である)天津新港船舶重工の臨港廠区の一部資産を総額40億4400万元(約857億円)で取得する。その中には50万トン級および30万トン級の大型乾ドック、全長817メートルの艤装用埠頭、同858メートルの船舶保修用埠頭などが含まれている。

■資産買収通じて規模拡大

 もう1件の取引では、中国船舶重工の100%子会社である武昌船舶重工集団が10億4400万元(約221億円)を投じて、(CSSC傘下の投資会社である)武船投資控股が保有する武船航融重工装備の全株式を買い取る。

 武昌船舶重工集団と武船航融重工装備はともに湖北省武漢市に本拠を置き、工場が隣り合わせの場所にある。また、武船航融重工装備は保有する生産施設を武昌船舶重工集団にリースしている。

 今回の買収により、武昌船舶重工集団は造船所の規模を効率的に拡大し、ハイテク技術を用いた付加価値の高い船舶の生産能力を高められるとしている。

 CSSCが総額50億元(約1060億円)を超える資産買収を決断した背景には、造船市場の空前の好景気がある。中国船舶工業協会のデータによれば、中国の造船会社による2024年上半期(1~6月)の新規受注量(載貨重量トン数ベース)は5422万トンと前年同期比43.9%も増加した。

 この好景気をもたらしたのは、造船需要の高まりに対する供給能力の不足だ。世界の造船業界は2010年代を通じて10年を超える長期不況に見舞われ、数多くの造船所が閉鎖に追い込まれた。浙商証券の調査レポートによれば、2024年初め時点で稼働している全世界の造船所は368カ所と、2008年の1031カ所から6割以上減少してしまった。

■民営大手も生産能力引き上げ

ところが、新型コロナウイルスの世界的大流行やロシアのウクライナ侵攻をきっかけに生じた海上輸送力の逼迫や、二酸化炭素(CO2