VTuber事業を手がけるカバーが高い成長率でANYCOLORに肉薄、両社の戦略にみる大きな違いとは?

AI要約

ANYCOLORとカバーは、VTuber事業を展開する上場企業であり、海外市場開拓と国内回帰の方向性の違いが明確になってきている。

ANYCOLORは過去時価総額で話題となったが、最近は業績予想の上方修正を繰り返しており、カバーより時価総額が高い。

しかし、カバーは成長期待が高く、売上成長率や営業利益率でANYCOLORを上回っており、PERも高い。これが両社の現状を示している。

VTuber事業を手がけるカバーが高い成長率でANYCOLORに肉薄、両社の戦略にみる大きな違いとは?

VTuber事業を手掛ける上場企業、ANYCOLORとカバーの方向性の違いが鮮明になってきました。

海外市場を開拓しようとしていたANYCOLORが、国内へと回帰。一方、カバーは「COVER USA」を設立して海外展開を強化しています。

市場が過熱化する国内においては、両社の特長と課題がくっきりと見えてきました。

ANYCOLORは、2022年9月に時価総額が3100億円に達して話題となりました。当時の日本テレビホールディングスやTBSホールディングスを超える規模。

VTuberという新型のエンタメがテレビ局を追い抜くさまは、令和というテクノロジーの新時代を象徴するような出来事でした。

カバーが上場したのは2023年3月。初値をつけた際の時価総額は1069億円。このとき、ANYCOLORの時価総額は1000億円台後半から2000億円前半で前後していました。

時価総額に差が生じていた要因の一つに、ANYCOLORが業績予想の上方修正を重ねていたことがありました。

現在、両社の時価総額は近いところで競い合うように推移しています。

2024年8月1日の終値時点でのANYCOLORの時価総額が1473億円、カバーが1166億円。

カバーのPERは23.0倍でANYCOLORが14.2倍。PERにおいてはカバーが上回りました。

PERは株価収益率のことで、1株当たりの純利益の何倍まで買われているのかを見る指標。ある銘柄が割高なのか、割安なのかを判断するのに使われます。この場合、カバーは割高であると見ることができます。

実はこのPERは今期の業績予想をもとに算出します。つまり、カバーの成長期待が高いと読みとることもできるのです。

過去3期における平均売上成長率はカバーが78.6%増、ANYCOLORが63.6%増。売上規模そのものはANYCOLORが勝っていますが、カバーはそれを追い越す勢いで売上を伸ばしているのです。なお、2022年度はANYCOLORがカバーの売上を20%近く上回っていましたが、2023年度は5%ほどまで差が縮まりました。

ただし、ANYCOLORの営業利益率は38.6%で、カバーが18.4%。利益率においては、ANYCOLORが圧倒しています。

後編では、ANYCOLORが高収益体質を維持できる理由と、それゆえの弱点、カバーが海外市場の開拓に乗り出した意味について考察していきます。

文/不破聡