五輪の金メダルは実質“銀メダル”?でも金価格上昇で日本代表が獲得した「貴金属価値」はうなぎ登り

AI要約

日本はパリオリンピック2024で20個の金メダルを獲得し、金メダルの価値について考察がなされている。

金メダルの価値は貴金属価値だけで考えると15万3000円ほどで、東京オリンピック2020の金メダルの価値よりも高いことが分かった。

金メダルの製作には環境配慮が行われ、リサイクル金属が使用されているが、意外な問題も浮上している。

 8月11日に閉幕したパリオリンピック2024で、日本は“お家芸復活”のレスリング、“シン・お家芸”のフェンシングなど7競技で計20個の金メダルを獲得した。この数は、他国開催のオリンピックでは最多となる。貴金属価格が高騰する中、この金メダルの価値は果たしてどれくらいになるのだろうか?  前回の東京オリンピック2020とも比較してみた。

 (森田 聡子:フリーライター・編集者)

■ パリ五輪金メダル1個あたり約15万3000円の貴金属価値

 パリオリンピック・パラリンピック2024では、メダルのデザインをLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループ傘下の高級ジュエリーブランド・ショーメが手掛けた。表面には、フランス国土の形を表す六角形のプレートがあしらわれている。このプレートは、エッフェル塔の改修工事を行った際に取り除かれた鉄片から作られたものだという。

 今回の金メダルの総重量は529g。プレートの部分の重量が18g、表面には6gの金が張られ、残りは銀で作られている。金メダルと言っても純金ではなく、実質的には“銀メダル”だ。

 この金メダル、貴金属としてみると、どれくらいの価値があるのだろうか? 

 オリンピックのメダルであることやエッフェル塔の鉄といったプレミアムを一切考慮せず、期間中の最終営業日となった8月9日の国内価格から算出すると、金メダル1個あたりの評価額はざっと15万3000円ほどになる。わずか6gの金の評価額が全体の半分を占めた。

 日本選手団は金メダルを20個獲得しているので、総価値は約306万円に上る。

 参考までに、これを3年前の東京オリンピック2020と比べてみたい。東京オリンピックでは、日本選手団は過去最多となる計27個の金メダルを獲得している。

■ 「金メダル=純金製」の時代も

 東京オリンピックの金メダルの総重量は夏季五輪最高の556g。内訳は、銀550gに金6gだ。期間中の最終営業日、2021年8月6日の国内価格で評価額を計算すると、1個あたり約9万7500円(うち金の割合は43%)になる。獲得数の27をかけると約263万円だ。

 重量も獲得数も東京オリンピックが上回っているのに、評価額はパリオリンピックの方が圧倒的に高い。これは、8月初旬に米国のニューヨーク金先物価格が初めて1トロイオンス(金や貴金属の重量を表す単位、31.1034768g)=2500ドルを突破するなど、貴金属価格が高騰しているためだ(円ベースの評価額では円安の影響もある)。

 20世紀初頭には金メダルが純金製だった時代もあった。それがなぜ表面だけ金になったのか。

 オリンピックは回数を重ねるごとに実施競技数が増え、必要なメダルの数も多くなっている。また、金はそもそも有限な資源で採掘量が減少するにつれ価格が上昇していることから、開催国の負担に配慮してIOC(国際オリンピック委員会)でルールが定められ、現在のようなスタイルに落ち着いたようだ。

 SDGs(持続可能な開発目標)の時代になると、“リサイクルメダル”も登場する。2016年のリオデジャネイロオリンピックでは銀メダルと銅メダルの30%が再生素材で作られたほか、金メダル用の金の採取に際して水銀を使用しないなどの環境配慮を行っている。

 東京オリンピックでは全国から集めた使用済み携帯電話や小型家電などから抽出したリサイクル金属(都市鉱山)だけで金・銀・銅のメダルを鋳造し、話題を呼んだ。パリオリンピックのメダルにもリサイクル金属が使用されている。

 しかし、パリオリンピックのメダルには思わぬ形でミソがついた。