日経平均株価、「ブラックマンデー超えの大暴落」から一転「過去最大の上昇幅」になった理由【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】

AI要約

8月5日の日経平均株価は史上最大の急落を記録し、続く6日は急騰となった。急落の背景には米国景気の先行き不安や米ハイテク株の続落、ドル安・円高が影響している。海外投資家の売りが主導した可能性が高く、パニック相場となった。

海外投資家のシェアが高い日本株市場では、先物取引や現物取引における売買が影響を及ぼしている。今回の急落では海外投資家の売りが急拡大し、裁定買い取引の解消や現物売りの誘発が起こった可能性がある。

投機筋や個人投資家の動向も影響しており、過度な悲観は不要であり、長期株高のトレンドが続くと考えられる。

日経平均株価、「ブラックマンデー超えの大暴落」から一転「過去最大の上昇幅」になった理由【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】

チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)が解説します。

●8月5日の日経平均はブラックマンデー超えの歴史的急落、6日は一転して歴史的急騰の見通し。

●日経平均の下げは先物主導か、裁定買い取引解消などの現物売り誘発で5日はパニック相場に。

●投機主導なら急騰も然り、長期株高トレンド、金融・国内環境を踏まえれば過度な悲観は不要。

8月5日の日経平均株価は急落し、前週末比4,451円28銭(12.4%)安の31,458円42銭で取引を終えました。下落幅は1987年10月20日の3,836円48銭(米国株の急落が世界に飛び火したブラックマンデー翌日)を超え、過去最大となりました。しかしながら、翌6日はこの流れが一転し、日経平均の寄り付きは前日比618円91銭(2.0%)高の32,077円33銭で取引が始まり、その後上げ幅は3,000円を超え急拡大しています(9時47分時点)。

今回のレポートでは、改めてこの急落と急騰の背景を探り、今後の展開について考えます。まず、歴史的な急落の根底には「米国景気の先行き不安」があり、それに起因する形で「米ハイテク株の続落」と「ドル安・円高の進行」が重なり、日経平均はこの3つの売り材料に押されたと推測されます。次に、これほどまでに下げ幅が大きくなった理由について考察します。

日本株市場の特徴として、市場全体の売買代金合計額に占める海外投資家のシェアが高いことがあげられます。2023年通年でみた場合、現物取引(東京および名古屋証券取引所合計)における海外投資家のシェアは約60%、金額は約1,199兆円です。先物取引(日経225先物、日経225mini、日経225マイクロ先物、TOPIX先物、ミニTOPIX先物の合計)ではシェアが約75%に上昇し、金額は2,887兆円に達しています。

そのため、今回は海外投資家(投機筋など)が、かなりまとまった金額で先物を売り、日経平均の急落を主導した可能性が高いとみています。これが、裁定買い取引の解消(詳細は3月12日付レポート参照)や、個人投資家の信用買い残高(7月下旬で約18年ぶりの高水準)の整理などを通じた現物売りを誘発し、8月5日は売りが売りを呼ぶ「パニック相場」となり、下げ幅が急拡大したと思われます。