「釣り具と時計」の不思議な関係? 北欧のフィッシングブランド“アブ・ガルシア”の起源と軌跡を探る

AI要約

ABUの歴史は創業者が時計職人から始まり、タクシーのメーターからリールの製造へと展開していった。

第二次世界大戦後にリール事業を始めたABUは、石油不足や輸入停止の影響を受けながらも成長を続けた。

イエテがRECORDリールを設計して生産を始め、ABUは釣り用品ブランドとしての地位を確立していった。

「釣り具と時計」の不思議な関係? 北欧のフィッシングブランド“アブ・ガルシア”の起源と軌跡を探る

 釣りに親しんだことがある人ならば、「Ambassadeur(アンバサダー)」や「Cardinal(カーディナル)」の名を聞いたことがあるはず。

 どちらもスウェーデンの“ABU”こと「AbuGarcia(アブ・ガルシア)」の誇るリールですが、その歴史は1921年にまで遡ります。今回は一世紀を超えるABUのモノづくりについて、ピュア・フィッシング・ジャパンのマーケティング本部の立原資朗さんとブランドマネージャーの石川智章さんに話しを聞きました。

VAGUE:創業当時のアブ・ガルシアについて教えてください。

立原さん:創業者のカール・オーガスト・ボーストロームはもともと、スウェーデンの懐中時計ブランドHALDA(ハルダ)社の時計職人でした。しかし、倒産してしまったため製造ラインや従業員ごと引き継ぐ形で、教会の跡地に「AB Urfabriken(ABウルファブリケン)社」を設立。それが1921年のことでした。

VAGUE:釣り具ブランドの起源が時計にあったとは。

立原さん:時計のほかにも、後にリールの名前にもなる「RECORD(レコード)」というタクシーのメーターも手がけていました。タクシーといっても、当時はいわゆる馬車だったそうです。

VAGUE:リールの名前の由来が「記録的な大きい魚」ではなく、タクシーの「走行距離の記録(レコード)」だったとは!

立原さん:自動車の普及とともに大きく飛躍するなか、1934年にカールが他界し息子のイエテが継承。しかし、数年後には第二次世界大戦が始まってしまいます。スウェーデンは参戦しませんでしたが、石油不足から車が規制されメーター事業が行き詰まります。

石川さん:リールの輸入も止まってしまったんです。子供のころからカールと釣りに親しんでいたイエテは「自分で作って販売しよう」と考え1941年、リールの「RECORD」を設計し生産を始めます。