【日下部保雄の悠悠閑閑】マーフィーの法則

AI要約

エアコンが壊れてしまい、家族の避難生活が始まる。

一週間後、業者が修理にやって来るが、期待はずれの展開に。

「マーフィーの法則」が頭をよぎる出来事。

【日下部保雄の悠悠閑閑】マーフィーの法則

 四半世紀ほど前に「マーフィーの法則」が流行った時期があったのを覚えているだろうか。「そうあってほしくない方になる」とユーモアを交えて使われた。大なり小なり経験したことがあると思う。この言葉を久しぶりに思い出した。

 外の気温がグングン上がってゆくある日、わが家のリビングで打ち合わせをしていた。それまで窓を開け放っていれば何とか我慢できたのが、とうとうエアコンをつけようということになりエアコンを作動させた。冷気の吹き出し口が開いて順調に温度は下がるはずだ。もちろん窓を閉め切って、部屋の中は一時的に温室になった。ムクもあきれて部屋を出て行く。

 打ち合わせは続く。お互い汗が止まらない。「なんかおかしい」。部屋の温度が上昇している気がする。慌ててエアコンに手をかざしてみとわずかに冷気が出ていた。「ホッ。気のせいか……」。

 しかしやっぱり暑い。もう一度、恐る恐る手をかざすと今度はぬるま湯のような温風を吹き出しているではないか!

 コワレタ……。

 ここからはもう打ち合わせどころではない。リビングは2階なので夏はただでさえ暑いので温度は急速に上がり始め、コンセントを抜いたり、叩いたり、リモコンの電池を替えたりしても役目を終えたエアコンは息を吹き返すことはなかった。

 折りわるく酷暑の外から帰宅した家人はさらに暑い部屋に入るなり絶望的な悲鳴を上げる。天気予報は無情にもこの日から夏一番の酷暑が続くと伝えている。しかも今日は金曜日。当然ながら土日は工事などやってくれない。そもそも人手不足のこの夏、工事を引き受けてくれるところがあるのか。慌てていつもの量販店に連絡すると1週間後が最速という。

 この日からリビングからの避難生活が始まった。避難先の部屋のエアコンはいつ止まってもおかしくないほど古く、毎日コンセントを抜いてから祈るようにリモコンを操作している。

 しかしTVのない小さな部屋で家人と差し向かいで買ってきたお弁当など食べていると、温泉に来ているようでなんか新鮮だ、と言ったら家人に変人扱いされた。

 そして1週間後の今、まさに今、業者さんが外で据え付け工事をしている。ドリルの音は救援隊の音にも聞こえる! 今日でつかの間の温泉生活は終わる! はずだ!

 現実はいつもそうあってほしくない方に動く。「マーフィーの法則」が頭をよぎる……。