“アルファロメオ最小のSUV”新型「ジュニア」にプレミアム感は感じられるか? 攻めたデザインは上級モデル超え!?「ミト後継車」の魅力とは

AI要約

アルファ ロメオ「ジュニア」の新型車「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」について触れる

デザインやスタイリングの印象についての懸念や評価の変化に関する考察

新型車「ジュニア」のデザインや特徴、対象層へのアプローチについて

“アルファロメオ最小のSUV”新型「ジュニア」にプレミアム感は感じられるか? 攻めたデザインは上級モデル超え!?「ミト後継車」の魅力とは

 その存在を知ったときから、ずっと気になっていたアルファ ロメオ「ジュニア」にようやく触れることができました。

 アルファ ロメオの聖地といえるイタリア・バロッコのテストコースでおこなわれた国際試乗会で対面したのは、最も高性能な仕様「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」です。

 その印象はどうだったかというと……。

 正直に白状するならば、「ジュニア」が2024年4月に「ミラノ」という名前で発表されたときから、実はほんのわずかではあったものの、懸念に近い気持ちが頭の中に残っていたのでした。

 というのも、ひとつは公開された写真や動画からスタイリングがかなりアグレッシブに感じられたからです。発表直後からあちこちで賛否渦巻く議論が展開され、どちらからといえば“否”の方が多かったことも知っていただけに、早く実車を見て触れて、その辺りを確かめたかったのです。

 もうひとつは、いうまでもなくお分かりでしょうが、電気モーターのみで走るクルマにアルファ ロメオ“らしさ”はあるのか? ということでした。

 アルファ ロメオのファンすべてがそうだというわけではありませんが、信仰心に近いような心持ちでアルファ ロメオに情熱をかたむけている人も少なくなく、そうした人の中には、燃料消費や二酸化炭素排出量の問題が呪いのように降りかかってくるかつてのアルファ ロメオの大きな特徴だった内燃エンジンのテイストへのこだわりが強い向きが多いのです。

 そうした熱心な“アルフィスティ”を納得させるだけの何かを、100%電動となる「ジュニア エレットリカ280ヴェローチェ」が提供してくれるのかどうか。ある意味、そうした原理主義的なところが僕(嶋田智之)自身の中にも少しばかりあることもあって、とにかく早く走らせてみたくて仕方なかったのです。

 テストコースの、いわばパドックに当たる箇所で初めて「ジュニア」と対面した瞬間の僕の感想は、「写真で見るよりはるかにカッコイイじゃん」というものでした。

 美しいか? とたずねられたら、素直に首を縦に振ることはできませんが、それでも不思議なことに、自然と目が惹きつけられてしまうのです。

 例えば、今では歴史的な名車といわれてる“醜いジュリア”と呼ばれた初代「ジュリア・ベルリーナ」、“イル・モストロ(=怪物)”とニックネームされた2代目「SZ」などと同じように、パッと見では美しさは感じられないしスタイリッシュにも思えないのに、魅力的に感じられるのです。

 それに、これは本当に興味深いことなのですが、アルファ ロメオの場合はニューモデルとしてデビューしたときに声の大きめなファナティックたちがスタイリングを否定し、それから数年が経過したら「今になって見ると結構カッコイイよね」といった具合に、評価がガラッと変わるケースが少なくありません。

 見慣れると魅力的に見えてくる何かがあるのか、それとも、アルファ愛がそうさせるのかは分かりませんが、そういう例をこれまでたくさん見てきました。おそらく、今は写真を見て「ジュニア」のデザインに首を傾げてる人も、実車を見て数年経ってみたら、評価が変わっているかもしれません。

●ふたつの“スクデット=盾”が設定されたフロントマスク

 でも、なぜ「ジュニア」のルックスは、それほど賛否が分かれているのでしょうか?

「ジュニア」のそのシルエット自体は、「ステルヴィオ」、「トナーレ」と続いたアルファ ロメオのSUVラインを継承しつつ、進化させたものです。3台の写真を並べてみると、その進化の過程や方向性をうかがい知ることができるでしょう。

 目の前にある「ジュニア」のフォルムは、「ステルヴィオ」や「トナーレ」の面影を残しつつ、ルーフはさらに低く、フェンダーの張り出しはさらに大きく、ショルダーの流れ方もさらになめらか、かつ豊かで、ドアの辺りの面構成の巧みさもあって、見る角度によっては少々グラマラスにすら感じられます。

 決定的に違うのは、「ステルヴィオ」や「トナーレ」が比較的トラディショナルなディテールでまとめられてるのに対し、「ジュニア」は革新的というか、だいぶ攻めたディテールが与えられてること。

 ひとつ例を挙げるなら、“コの字”と“逆コの字”を組み合わせたヘッドランプ回りや、新しい意匠の“スクデット=盾”で構成される顔つきなどが、違和感へとつながったのかもしれません。

 そのスクデットのデザインは、2種類存在します。

 ひとつは“プログレッソ”と呼ばれるもので、高性能バージョンと上級仕様に使われます。スクデットの中に大きな十字と“ビシォーネ(ミラノ・ヴィスコンティ家の紋章である、人を飲み込む蛇のこと)”が透かし彫りになっている、「ジュニア」で新たに導入された意匠です。

 もうひとつは“レジェンダ”という名称で、三角形のメッシュの上の戦前のアルファ ロメオ車のように筆記体のロゴが流れるレトロ風味の意匠です。

 おそらく、アルファ ロメオがねらっている若く新しいユーザー層に向けたのが“プログレッソ”、年齢層の高い保守派のためのフェイスが“レジェンダ”ということなのでしょう。