「銀行にWi-Fi?あるワケない」メガバンク行員が支店で「赤いキノコ」を大捜索→そして知った残念過ぎる現実とは
NTTドコモ関連会社から 突然の電話でレピータの撤去が要求され、探し始める課長。
店内に設置されたWi-Fi用レピータが見つからず、深刻な状況になる可能性がある。
Wi-Fi環境の重要性と日本での普及不足についての問題意識が高まる。
● NTTドコモ関連会社から かかってきた突然の電話
「課長、ドコモの関連会社から電話が入ってます。出ますか?」
「ドコモ?なんだろう?つないで下さい」
総務担当の峯岸さんが、内線経由で電話を取り次いだ。
「目黒課長さんですね。NTTドコモの関連会社、ドコモCSの猿渡と申します。本日、弊社が10年前に設置したレピータの撤去に伺いたいのですが」
「レピータ?」
「はい、室内など電波が弱くつながりにくい場所に設置している、電波増幅機器のことです」
「はあ…その機械はうちのどこに?」
「こちらも分かりません。課長さんの方がお詳しいのでは?」
「そんな引き継ぎは受けていないですねえ…。特徴は?」
「黒色で弁当箱ぐらいの大きさで、赤色のキノコのイラストシールが貼ってあります。目立つので一目で分かると思います。他の支店では、ほとんどがATMのバックヤードにありました」
ATMのバックヤードとは、利用客が出し入れする現金を補充したり回収したり、故障や不具合をメンテナンスする部屋のことだ。銀行によっては、メンテ室や保守室などと呼ばれることもある。
ATMは24時間電源が付きっぱなしで、ものすごい熱を発することから、真冬でも絶えず冷房がキンキンに効いている。ATMが稼働していない夜中であっても、警備上必要な信号を送受信したり、バックアップデータのやりとりを本部のホストコンピュータと行ったりするため、電源は切らない。
万一、空調が故障した場合はATMにも影響があるそうだ。したがってATMのバックヤードは、これらの保守に使われる機材が置かれ、雑然としていることも多い。とはいえ、ATMとは関係のない機器が唐突に設置されることなど、防犯上あり得ない。
● 行内中をくまなく探したが 見つからなかったレピータ
私は、躍起になってこのレピータというものを探し始めた。というのも、レピータさえ正確に作動していれば、iPadのデータ更新に時間を割かれることもなくなると思ったからだ。
私が働くM銀行では、担当者1人に1台iPadが支給されている。定期的にアプリやOSのバージョンアップがあるのだが、Wi-Fiが使えないと途方もなく時間がかかり不便なのだ。そのため店内に小さなアンテナがあり、その周辺のみWi-Fiが使えるようになっている。
しかし、くまなく探したものの、レピータらしき機器は見つからなかった。
「もう捨てられたのかなあ…」
工事の時に不要物と見なされ、捨てられたのかも知れない。その可能性は十分にあり得る。銀行員の性なのか、悪い報告ほど早いほうが良かろうと、ドコモに電話をした。そして、誤って廃棄してしまったかも知れないと正直に話した。
「あの機器はリースで御行に貸し出しているんで、ないと困るんですよ…。もう少ししっかり探してもらえませんかね」
言葉は柔らかいが、要するに「もっとしっかり探せ。見つからなかったら大変なことになるぞ」というニュアンスに受け取れた。
「は、はあ…分かりました」
ロビーにいたお客から、店内にWi-Fiは完備されているか聞かれたことがある。今やWi-Fiは、スマホやPCを扱う人にとっては必須の設備であり、重要な社会インフラになりつつある。電車内、駅構内、大学、カフェや公共施設など多くの人が行き交う場所では使えて当然であり、使えない状況だと支障をきたす場合も多い。商店や飲食店ならば売り上げに関わることもあろう。
日本は、海外に比べて圧倒的にWi-Fi環境が悪いらしい。外国人観光客から話しかけられ、道を尋ねられると思いきや「Wi-Fiが使えないので使える場所を教えてほしい」と訊かれたことがある。ついでに「日本はこんなにテクノロジーが進んでいるのに、なぜWi-Fiが普及していないのか?」とぼやかれてしまった。