往路は有明海、復路は大村湾の景色 新幹線なら23分を3時間かけて移動する「ふたつ星4047」のスローな旅の魅力

AI要約

JR九州の観光列車「ふたつ星4047」は、佐賀から長崎の在来線沿線を楽しめる人気の列車で、内装にこだわりがあり、木材を使用した上品なデザインが特徴。

列車は新幹線と在来線を結ぶルートで、有明海と大村湾の美しい景色を楽しみながら約3時間の旅を提供。

乗客は在来線沿線の風景や食、おもてなしに魅了され、70%の高い乗車率を誇る。

試乗会では、地元の食や飲み物などを楽しむことができ、各駅で地域の魅力を体感。列車内では特製弁当や日本酒の飲み比べなども提供される。

乗客はスローな旅の醍醐味を味わいながら、各地の観光地や風景を楽しんでいる。

「ふたつ星4047」は有明海コースと大村湾コースを運行し、定員87人の車両で、予約は1カ月前から可能。在来線沿線の魅力を存分に楽しめる人気の観光列車だ。

往路は有明海、復路は大村湾の景色 新幹線なら23分を3時間かけて移動する「ふたつ星4047」のスローな旅の魅力

 佐賀、長崎両県の在来線沿線を楽しめるJR九州の観光列車「ふたつ星4047(よんまるよんなな)」。2022年9月の運行開始からまもなく2年を迎える中、乗車率は約70%と快走を続けている。何が乗客を引きつけているのか。有明海コースの試乗会に参加し、その魅力を探った。

 6月中旬、平日の午前10時過ぎ。JR武雄温泉駅(佐賀県武雄市)のホームに、白と金が基調の上品な列車が姿を現した。試乗会に参加した旅行代理店や沿線自治体、報道の関係者など約30人が出迎えた。車両を初めて目にした記者は、胸を躍らせて乗り込んだ。

 まず目を引いたのが、こだわりを感じる内装だ。JR九州で多くの車両デザインを担当した水戸岡鋭治さんが手がけた。壁や座席には木材をふんだんに使用し、大型ソファなどが備え付けられている。ラウンジが併設されている車両もあり、ここでしか味わえないうれしの茶や、厳選した日本酒などを販売している。

 ふたつ星4047が運行を始めたのは、西九州新幹線(武雄温泉-長崎間)が開業した22年9月。並行在来線となった長崎線の江北-諫早間や、その他の在来線の沿線にも新幹線の効果を広げようと、武雄温泉-長崎間にJR九州が投入した。往路と復路でルートが異なり、長崎線を中心に走る往路は有明海、大村線などの復路では大村湾の景色を見られる。

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 武雄温泉駅を午前10時22分に出発した列車は、約15分後に江北駅(佐賀県江北町)に停車した。ホームでは、地元の菓子店が手がけるプリンやフルーツサンドなどの販売が待っており、即完売するほどの人気ぶりだった。

 続く肥前浜駅(同鹿島市)では、地元日本酒の飲み比べセット(税込み千円)が用意されていた。全国的に名が通る「鍋島」など酒造りが盛んな鹿島ならではの、おもてなし。記者も「取材のため…」と言い訳しながら味わった。次の多良駅(同太良町)では、鳴らすと幸せになるとされる「幸せの鐘」を鳴らした。

 進行方向左手に有明海を眺めながら進む列車。梅雨入り後にもかかわらず晴天に恵まれ、青空に映える有明海がまぶしかった。県境を越え、正午には小長井駅(長崎県諫早市)に到着。一面に干潟が広がる干潮の有明海をバックに、車両が美しく映える。みんな、ここぞとばかりに写真を撮っていた。

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 昼食に佐賀牛や有明海産のりを使った「特製ふたつ星弁当」(要予約)を満喫していると、諫早駅(同)を過ぎた。今度は右手に大村湾を望みながら、午後1時15分には終着駅の長崎駅(長崎市)に着いた。

 初めて乗ったという太良町職員の川島杏奈さんは「スローな旅だと、景色や雰囲気などがより伝わる」。諫早市の観光関係者も「地元の良さを改めて感じた。小長井駅の景色などは観光資源になると思う」と満足そうに語った。

 武雄温泉-長崎間は、西九州新幹線だと最短23分で移動できる。それだけに、味わえない楽しみもたくさんある。在来線沿線の風景、食、人のおもてなしの魅力を気付かせてくれる、約3時間の列車旅だった。

 (米村勇飛)

 ◆ふたつ星4047 運行は毎週金-月曜や祝日を中心に、夏休み期間中は火、木曜も追加する。各曜日とも、有明海と大村湾の各コースを1日1回運行する。3両編成で定員は87人。全区間乗車する場合、有明海コースは大人4680円、大村湾コースは同5000円。予約は乗車の1カ月前から。