父から継いだ「18億円の法人所有不動産」を現金化したい…手残りが「6億円」増えた驚きの理由。“不動産売買”以外の選択肢【不動産鑑定士が解説】

AI要約

不動産M&Aが注目を集めている理由や手法について解説。

不動産M&Aと不動産売買の手残り額の違いを具体的な事例をもとに比較。

会社所有の不動産を清算する際の条件と具体例を示す。

父から継いだ「18億円の法人所有不動産」を現金化したい…手残りが「6億円」増えた驚きの理由。“不動産売買”以外の選択肢【不動産鑑定士が解説】

企業の合併や買収の際に使われるイメージがある「M&A」。しかし昨今、法人所有の不動産を譲渡するひとつの手段として「不動産M&A」が注目を集めていることをご存じでしょうか。なかには、不動産M&Aを活用することで単なる不動産売買と比較し、税負担・手残りに大きな差が出るケースも。本稿では法人所有の不動産の売買に悩むA氏の事例から、不動産M&Aを活用する場合と宅建業法に則り売買する場合の2つを、フジ総合グループ・株式会社フジ総合鑑定の大阪事務所所長の住江悠不動産鑑定士が比較・解説します。

「不動産M&A」とは、広義には不動産を所有する会社を対象にしたM&Aのことをいいます。なお本稿では、範囲を絞り、不動産のみを所有する資産管理会社(不動産賃貸業)のM&Aについて解説していきます。

一般的なM&Aの目的は、「会社または事業全体の譲渡」です。一方、不動産M&Aは「不動産の譲渡」を目的としています。譲渡の対象は不動産そのものではなく、株式譲渡の形で不動産を所有している会社ごと移転するのです。「不動産M&A」は「不動産売買」に比べ、売却後の手残りに大きな期待が見込め、またM&Aの税制優遇措置も活用できるため、不動産を譲渡するひとつの方法としていま注目されています。

では、具体的な事例をもとに「不動産M&A」と「不動産売買」の手残り額の違いについて比較していきましょう。

A氏は、A氏の父親が設立した資産管理会社を承継し、不動産賃貸業を営んでいます。A氏には承継者がいないことから、法人所有の不動産を売却して現金化したいと考えています。A氏の会社の貸借対照表は以下のとおりです。なお、今回の事例では金額や税率を簡易化しています。

前提条件

・会社の株主はA氏1人のみ

・不動産の時価は18億円

・会社の株式の取得原価は3億円

・会社の株式の譲渡価額は19億5,000万円

・そのほかの資産は簿価で処分、換金できたと仮定

・不動産を売却し会社を清算した年にA氏には配当所得以外の所得はないと仮定