意外と知らない、日本の自動車産業「技術者不足」の大打撃の「意外な実態」

AI要約

将来の人口減少に伴う自動車産業の変化について解説。充電スタンドや水素ステーションの影響、軽EVの普及、ガソリンスタンドの廃業などが懸念される。

自動車産業の国内マーケットの縮小や高齢ドライバーの増加が業界に与える影響について言及。

日本の自動車産業が直面する課題と将来展望について考察。

意外と知らない、日本の自動車産業「技術者不足」の大打撃の「意外な実態」

国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。

ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。

※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。

充電スタンドや水素ステーションも自動車産業にとっては不安定要素だ。

整備こそ政府のバックアップもあって進むだろうが、設置が目的ではなく、定期的なメンテナンスが不可欠だ。ここでも技術者不足が響くこととなる。

人口が激減していくエリアで経営的にどう維持するかもポイントとなる。利益が上がらなければリニューアル費用は捻出できない。過去に整備した施設では老朽化が目立ってきた。

燃費が良くなったこともあって、過疎エリアを中心にガソリンスタンドの廃業が相次いでいるという現実があるが、充電スタンドや水素ステーションも例外とはいかないだろう。経営を維持し得る利用者数を確保できなければ立地し続けられない。しかも今後は、過疎エリアは急速に広がっていく。

人口の少ない地方で充電スタンドや水素ステーションを維持できなければ、自宅で簡単に充電できるタイプの軽EV(軽の電気自動車)が普及する可能性が出てくる。

1回の充電による航続可能距離を伸ばそうとすれば、大容量の電池が必要となり、車体は重く車両価格も高くなるが、その点、軽自動車であれば重量が軽く、消費する電力量は少なくて済む。

しかも、高齢ドライバーの増加とともに近場の移動だけで十分というニーズも広がってきた。この程度の移動距離なら自宅での充電でも何ら差し支えはないだろう。

もちろん、ガソリン車と同じく、長距離を走らなければならないというニーズが無くなるわけではないので、急速充電できるスタンドの経営問題からは逃げられない。むしろ、自宅充電で間に合う軽EVの高齢ドライバーが増えたならば、スタンド経営はその分だけ苦しくなる。

充電スタンドなどをめぐっては、もう1つ懸念材料がある。ガソリン車が完全になくなるまではかなりの時間を要することだ。しばらくはガソリン車と電気車や水素車が併存する時代が続くが、ガソリン需要は長期にわたって減っていく。過疎地だけでなく給油所経営を圧迫しガソリンスタンドの廃業が加速するだろう。ガソリンスタンドが急速に消え、一方で充電スタンドや水素ステーションの設置も不十分という地域では、どのようなクルマに乗ろうともエネルギー補給が不便な状況が続くこととなる。

これは、充電スタンドや水素ステーションが全国に普及・定着すればいずれは解消する問題ではあるが、クルマを簡単には買い替えない高齢層が増えていくことで移行期が長くなれば、その間のエネルギー補給の不便さを理由としたクルマ離れにつながりかねない。

整備士不足にせよ、充電スタンドや水素ステーションの安定経営への不安にせよ、自動車産業の国内マーケットの縮小を、人口減少による縮小よりも速く進める要因となり得るということだ。

自動車メーカーの多くはグローバルな事業展開をしており、国内マーケットの縮小が少し早まるぐらいではびくともしないだろう。だが、裾野産業を含めて日本人の雇用を支えてきた代表的産業である。国内市場の変質への対応を怠れば、その影響は他の産業へと波及的に広がっていく。

つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。