【米国株】ハイテク株以外に“AI”の恩恵を受ける業種は? データセンターの電力消費が急増する「電力株」、医薬品の開発スピードが早まる「ヘルスケア株」に注目

AI要約

米国の経済は堅調で企業の業績も好調。AI革命により電力株やヘルスケア株が株価上昇が期待される。

電力需要が急増し、AI関連設備やデジタル化の拡大による電力消費量が増加。脱炭素への対応も企業の重要課題。

肥満症治療薬の需要が拡大し、イーライ・リリー、ノボ・ノルディスクの成長が続く。AI活用で医薬品開発のスピードも向上。

【米国株】ハイテク株以外に“AI”の恩恵を受ける業種は? データセンターの電力消費が急増する「電力株」、医薬品の開発スピードが早まる「ヘルスケア株」に注目

 【米国株】ハイテク株以外で“AI革命”の恩恵を受けて株価上昇が見込めるのは「電力株」や「ヘルスケア株」! 

●米国の実質GDPは7四半期連続でプラス成長! 

インフレ抑制の利上げによる景気減速は軽微なものに! 

 目下、米国景気は底堅く、企業の業績見通しも良好だ。その牽引役の一つとなっているのが生成AIである。2022年11月にオープンAIの対話型AIチャットサービス「ChatGPT」が一般公開されてから、1年半が経った。この短期間で生成AIが世界に与えた影響には、すさまじいものがある。

 AIは、かつて世界をガラリと変えたパソコンや携帯電話、インターネットよりも大きなインパクトを与えると言われる。実際、AI革命はIT以外の業種の業績見通しにも影響を与え始めている。

 下の図は、米国のS&P500指数に組み入れられている企業の1株利益の伸び率(2024年1~3月期実績と4~6月期予想)を、業種別にまとめたデータだ。GAFAMなどの大手ハイテク株が組み込まれている「通信サービス」と「情報技術」の伸び率は、実績、予想ともに2ケタ増となっている。

 続いて注目したいのが、4~6月期の業績が急回復する見通しの「エネルギー」と「ヘルスケア」の2業種。加えて、4~6月期の伸び率は10%を割ったものの、1~3月期に30%超の高い伸びを実現した「公益事業」だ。この3業種の主要銘柄は、株価上昇が続いている。

「特に、市場関係者からは公益事業とエネルギーの2業種への注目度が高まっています。膨大な計算が必要な生成AIの利用拡大によって、世界でデータセンターの電力消費量が急増しているからです」(ストラテジストのポール・サイさん)

 国際エネルギー機関(IEA)によると「ChatGPT」での1回の問答に必要な電力消費量はGoogle検索の10倍にもなる。AIの利用は莫大な電力量を必要とすることから、近い将来、米国全土で使用される電力の20%以上がAI関連の設備に使われると言われている。

 加えて、ロボットやEV、暗号資産などのデジタル化の進展も、電力需要量の長期的な拡大を後押しする。何しろ、IEAは「2026年の電力消費量は最大で、2022年の2.3倍になる」と試算しているのだ。

 電力需要の急増で、地球温暖化対策も喫緊の課題となっており、企業も対応を迫られている。世界中でデータセンターを増設している巨大テック企業は、同時に脱炭素に向けた取り組みにも注力しているのだ。

 例えば、アルファベット(GOOG)やマイクロソフト(MSFT)は、データセンターや社屋で使う電力を、100%再生可能エネルギーに切り替える計画だ。公益事業やエネルギー関連銘柄の中でも、脱炭素につながる事業に強みがある企業の高成長が期待されている。

●「肥満症治療薬」の需要はまだまだ拡大する! 

AIの活用で医薬品の開発スピードが早まる未来がやって来る!? 

 一方で、ヘルスケア分野は業績好調な企業が多いが、全体では株価が軟調だ。それは、以下の業種別の株価動向を見るとよくわかる。

 ただ、ヘルスケア関連株の中でも肥満症治療薬の販売が絶好調のイーライ・リリー(LLY)やノボ・ノルディスク(NVO)は、株価が大きく伸びている。米国株に詳しいむさし証券の杉山武史さんは「両社の業績成長は続く」と分析する。

 「肥満症は糖尿病や高血圧といった生活習慣病だけでなく、がんや認知症などのリスクを高める万病の元とされていますが、有効な治療法がなかった。しかし、イーライ・リリーとノボ・ノルディスクが開発した肥満症治療薬は、有効性と安全性が確認され、米国での販売が急増。市場規模は、2030年には1000億ドル(約15兆円)を超えるとも言われています」(杉山さん)

 学術誌『ランセット』によると、世界の肥満人口は10億人を超えており、肥満症治療薬は世界中で需要拡大が見込める点も好材料だ。

 「また、今後はAIの活用で医薬品の開発スピードが早まるでしょう。この先、画期的な薬効を持ち、年間の売上が10億ドル超えの大型薬が続々と生まれるかもしれません」(杉山さん)

 ヘルスケア関連株は、継続的にウォッチしていく必要がありそうだ。