損したくない人は気づいている…「新紙幣切り替え」で起こる「意外な効果」

AI要約

2024年7月3日から新紙幣の流通が始まり、日本の貨幣経済に変化が訪れている。

キャッシュレス決済の普及にも関わらず、現金大国としての地位が保たれている理由にはタンス預金のニーズが大きく影響している。

日本のインフレが本格化する中、現金保有が不利になる状況となっており、お金に対する意識の変化が進行している。

損したくない人は気づいている…「新紙幣切り替え」で起こる「意外な効果」

2024年7月3日から新紙幣の流通が始まった。日本は諸外国の中でも突出した現金大国として知られているが、その兆候にわずかだが変化が生じ始めている。今回の新紙幣発行は日本における貨幣経済の大きな転換点となる可能性がある。

紙幣は偽造防止などの観点から、一定期間ごとに新しいものと入れ替えることになっており、おおよそ20年がその目安とされる。今回の新紙幣にはホログラムなどの新技術が用いられており、さらに偽装が困難になった。

これまでの時代であれば、紙幣が入れ替わるとすぐに新札が流通したが、近年はキャッシュレス決済が増えており、新紙幣を目にする機会が少なくなるのではないかとの意見も聞かれる。

日本のキャッシュレス決済比率は上昇傾向ではあるものの、諸外国と比較するとGDP(国内総生産)に対する現金流通高比率は突出して高く、日本は依然として現金大国である。近年、クレジットカードや電子決済に加え、スマホ決済が普及したことで、少額決済の多くがキャッシュレスに移行している。

筆者も最近ではほとんど現金を持ち歩いておらず、キャッシュレス決済で済ましている。特に若い世代の人はそうした傾向が顕著であり、日常的な少額決済の場からは、現金は消えつつあると言ってよいだろう。

では、日常生活での現金利用が減っているにもかかわらず、なぜ現金大国という状態が続いているのだろうか。その理由は、流通している紙幣の種類を見れば一目瞭然である。日本では流通している紙幣の中で、1万円札の比率が極めて高くなっている。これは、いわゆるタンス預金のニーズが高く、紙幣を自宅などに保管しているケースが多いことを物語っている。

日本において、突出してタンス預金が多いことの理由は完全には解明されていないが、多くの日本人が自国の金融システムを信用していないという背景があるのは間違いないだろう。確かに、イザという時に銀行が即、引き出しに応じてくれるとは限らず、現金を持っている方が、安全で確実だというのは、その通りかもしれない。

だが、こうした日本人特有のお金に対する意識は大きく変化しつつある。その理由は、日本でもいよいよインフレが本格化しており、現金を保有していることが、即、損失につながる状況になってきたからである。

日本では長くデフレが続いていたので、現金を保有しておくことにはそれなりに合理性があった。だが、日本でもいよいよインフレが本格化しつつあり、日銀が600兆円という莫大な当座預金を積み上げている現実を考えると、インフレがこのまま収束する可能性は低い。

継続して物価が上がり続けるという予想が成り立つ経済圏においては、現金保有は著しく不利になる。現時点で100万円の現金があれば100万円の自動車を買うことができる。だが5年で物価が1.5倍になった場合、5年後の車の価格は150万円になってしまう。現金をそのまま保有していただけでは、5年後にも100万円の価値しかないので、100万円で1台の車を買うことは不可能となる。