上海の伊勢丹が営業終了、中国で日系百貨店の閉店相次ぐ…高島屋は売上高が減少傾向

AI要約

日系百貨店の閉店が相次ぎ、中国本土の伊勢丹はピーク時の6店舗から1店舗にまで減少した。消費不振やネット通販の拡大が要因で、地元の百貨店業界に厳しい現実が浮かび上がっている。

上海市の伊勢丹が閉店した際、感謝の挨拶がなく静かな幕切れとなった。中国政府の外資誘致政策と逆行する形になり、中国資本の運営会社が引き継ぐこととなった。

中国内の百貨店業界はネット通販の影響も大きく、売上高の減少や不採算店の閉鎖が相次いでいる。大手百貨店も苦戦が続いており、市場環境が厳しい状況だ。

 【上海=山下福太郎】中国で日系百貨店の閉店が相次いでいる。上海市の伊勢丹は30日に最後の営業を終え、中国本土の伊勢丹はピーク時の6店舗から1店舗に減った。ネット通販の拡大や不動産不況に伴う消費不振が背景にあり、現地の百貨店事業の苦境ぶりが浮き彫りになっている。

 上海市中心部の「上海梅龍鎮伊勢丹」では30日、午後6時の閉店時刻を大幅に過ぎても名残を惜しむ来店客でごった返した。

 夫と買い物を楽しんだという地元の女性(52)は「学生時代から数え切れないくらい買い物に来た思い出の場所。日本製品が充実していただけに残念です」と惜しんだ。

 閉店に際し、日本のように店長らが玄関前に並び感謝する姿はなかった。中国政府が外資企業の積極誘致を進める中、撤退は逆行する形になるため静かな幕切れに徹したという。7月1日からは中国資本の運営会社が店を引き継ぎ、入居テナントの多くはそのまま営業を続ける。

 伊勢丹が中国1号店を上海に出店したのは1993年。同店は97年に上海の2か所目として開業した。売上高は2014年度の119億円をピークに減少を続け、23年度は52億円に落ち込んだ。

 伊勢丹は中国で最大で6店舗を構えたが、22年末に成都市の2店舗、今年4月には天津市の2店舗を閉じた。今回の閉店で中国には3年前に開業した天津の店舗が残るのみとなる。

 滋賀県彦根市を地盤とする平和堂も1998年に湖北省に百貨店を出店し、一時は同省内に4店舗を構えた。だが昨年6月に不採算店を閉店するなどし、現在は1店舗まで減らした。大手百貨店では高島屋が上海で営業しているものの、売上高は減少傾向で苦戦が続いている。

 背景にはネット通販の拡大がある。23年には中国国内の消費財販売に占めるネット通販の割合が4分の1に達した。「家賃など出店コストが必要ない分、同じ商品を大幅に安く売って百貨店から客を引き寄せた」(中国メディア)との指摘がある。