コロナ禍機に外販やキッチンカー注力 収益多角化、新社長に期待「現状維持は衰退」

AI要約

新型コロナウイルスの感染拡大により、山ちゃんの店舗も苦しい状況が続いたが、従業員を大切にし給料を支払い続ける姿勢を貫いた。

コロナ禍を機に収益の多角化を図り、外販事業やキッチンカー事業、中華料理店など新たな取り組みを開始している。

「ワンランク上の世界の山ちゃん」や「やむちゃん」などの新業態も展開し、挑戦と創意工夫を大切にしている。

 2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大で、「世界の山ちゃん」の店舗も断続的に休業や営業時間短縮を強いられた。弁当を始めるなどの取り組みも行ったが、人件費や家賃をカバーするには到底足りず、蓄えを吐き出す日々が続いた。

 運営会社「エスワイフード」代表取締役の山本久美さん(57)が「地獄」と振り返る中でも、人員削減は行わずに従業員に給料を払い続けた。16年に59歳で逝去した夫で創業者の山本重雄さんが無駄遣いをせず、会社に余力を残してくれたおかげだった。

 コロナ禍前、会社の中心はあくまで山ちゃんであり、他の事業は「サポート役」との考え方だった。だがコロナ禍という未曽有の事態を経験し、「仮に店舗がゼロになっても、稼げる体制が必要だ」(久美さん)と認識を改め、収益の多角化を急いでいる。

 その一つが、自社商品をスーパーなどで販売する外販事業だ。21年2月に冷凍食品の「幻の手羽先」の販売を始めたほか、手羽先に使う特製コショウを使ったチャーハンのもとやコロッケ、ポテトチップスなど、食品メーカーとも連携して商品の幅を広げている。

 動物園や高速道路のサービスエリアといった場所に、期間限定で出すキッチンカー事業にも注力している。骨付きで持ちやすい「チューリップから揚げ」などキッチンカー専用のメニューもあり、まだ店舗がない地域での山ちゃんの認知度向上にもひと役買っている。

 山ちゃん以外の店舗の模索も進む。今年1月に名古屋・伏見に開業した「中華酒場やむちゃん」は、台湾の街中華をモチーフとした店舗で、肉シューマイやマーボー豆腐といった定番のメニューをそろえている。

 中華料理店はコロナ禍前にも展開していたが、コロナ禍に伴う業績不振で閉店した経緯があった。以前は点心を中心に、女性をターゲットとしたSNS映えする店づくりを行っていたが、今回は親しみやすい街中華で幅広い世代への浸透を図り、再起を期す。

 「ワンランク上の世界の山ちゃん」と銘打った居酒屋「山」は、企業の接待などの需要を見込む。上質で落ち着いた雰囲気と、手羽先などの料理の値頃感を両立して好調に推移しており、先月31日には名古屋駅近くに3店舗目をオープンした。

 エスワイフードの歴史をひもとくと、実はすし店やフレンチトースト専門店に参入していた過去もある。広報担当者は「(重雄さんは)良いと思ったことはやってみる人だった。新しいことに恐れずに挑戦することは、今も会社にとって重要なテーマだ」と説明する。