東急の「自動運転バス実証実験」に京急バスも参加、成果と課題が見えてきた

AI要約

2024年5月28日から6月3日まで、東急と東急バス、京浜急行バスは自動運転バスの共同実証実験を行った。実証実験は、神奈川県川崎市と横浜市を中心に行われ、遠隔コントロールセンターも設置された。

東急と東急バスの自動運転バス取り組みは、運転手不足に加えて、新しい路線を開設したいという意図も含まれている。自動運転バスは、住宅地からスーパーマーケットやクリニックなどを結ぶ「ラストワンマイル」の交通手段に利用される予定。

実証実験では、自動運転バスの走行ルート作成や乗客案内システムなどが検証され、営業運転に向けた課題も明らかになった。この取り組みは自動運転技術の実用化に向けた一歩となっている。

東急の「自動運転バス実証実験」に京急バスも参加、成果と課題が見えてきた

 2024年5月28日から6月3日まで、東急と東急バス、京浜急行バスは自動運転バスの共同実証実験を行った。東急と東急バスの実証実験は虹が丘営業所(神奈川県川崎市)付近の「虹ヶ丘・すすき野エリア」で3回目となり、そこに京急バスの能見台(のうけんだい)営業所(横浜市)付近の「能見台エリア」が加わる。さらに、横浜みなとみらい地区にある京急グループ本社ビルに遠隔コントロールセンターを設置した。運転席に運転者が座り、常時状態監視を行う「自動運転レベル2」である。

 鉄道ライターの私がバスの実証実験を取材した理由は単純で、2022年9月に実施した「虹ヶ丘・すすき野エリア」が自宅の近所だったからだ。主治医に課せられた1日1時間の散歩エリアで自動運転バスが走った。2023年3月に実施した2回目も取材して、今回は3回目。自宅から離れた京急バス能見台営業所も取材した。「ウチの近所」が取材のきっかけだったけれど、もはや「実現するまで見届けよう」という気持ちになっている。

 東急と東急バスによる自動運転バスの取り組みは、2022年9月に行われた第1回目の「虹ヶ丘・すすき野エリア」よりも早く、2020年に伊豆急行の伊豆高原駅で、複数台の自動運転車両を監視・操縦可能なコントロールセンターの運用実験を実施した。2021年度からは、静岡県が実施する自動走行実証事業「しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト」を受託し、継続して実用化に取り組んでいる。

 この時の報道資料も拝見していたけれど、遠いし、鉄道ネタではなかったから行かなかった。「遠いから取材しない、近いから取材する」という考え方は自分でもどうかと思うけれど、一言でいえば「地縁」である。

 東急と東急バスが自動運転バスに取り組む理由は「運転手不足」だけではない。むしろ「路線を増やしたい」だ。既存の大型路線バスを代替するつもりはなく、大型路線バスの停留所末端付近から目的地同士を結ぶ「ラストワンマイル」に導入したい。比較的交通量が少なく、住宅からスーパーマーケット、クリニックなどを結ぶ路線に導入したいと考えている。しかし、新路線を開設しようにも運転手が足りない。だから自動運転の可能性を試したい。

 「虹ヶ丘・すすき野エリア」の実証実験の第1回目は、EV自動運転バスの試運転的な要素が強い。事前にレーザーレーダーで走行ルートの点群データを取得し、高精度三次元地図データを作成しておく。EVバスは走行時のレーザーレーダーの測定値を元に三次元地図データを参照して自分の位置を把握して走行する。GPSは使わない。一時停止標識、障害物、交差点を検知すると停止し、運転士が手動で発信操作や駐車車両の回避操作を行う。時速19キロメートルという低速車両が公道で協調できるかも検証した。

 第2回目は、スーパーマーケットやコンビニを通る「実用的なルート」に変更した。経由地の1つに多目的イベント広場「nexusチャレンジパーク早野」を組み込んでイベントを開催し、そこに行くための移動手段として自動運転バスを位置付けた。また虹が丘営業所内にコントロールセンターを設置して、自動運転バスの車内と車外を遠隔監視した。

 車内にはモニター画面を設置して、乗客に対して運転手の代わりに行先や次のバス停などを案内するシステムを設置した。実営業に向けた実験として、スマートフォンアプリ「LINE」を使った乗車予約システムを採用した。途中のバス停で乗車と降車が可能になり、乗車定員の管理もできる。しかし沿線への周知が足りなかったようで、地元の人々が利用しにくかったようにも感じた。実証実験ではほとんどの試乗希望者が一周乗車を望んだからだ。営業運転に向けた課題が浮き彫りになったという点で「成果アリ」だった。