EVは覇権争いに 米「中国EVに100%の関税を」絶対に阻止したい中国の“標準化”

AI要約

中国政府が電気自動車に力を入れる理由とその影響について解説。

中国で生産された電気自動車が過剰生産され、廃棄される状況や国際的な経済摩擦についても触れられている。

中国が技術の標準化で主導権を握る可能性に欧米諸国が懸念を抱いていることが示唆されている。

EVは覇権争いに 米「中国EVに100%の関税を」絶対に阻止したい中国の“標準化”

 EV大国と呼ばれる中国。中国政府はメーカーに補助金を出すなどして電気自動車に力を入れている。

 なぜそこまで力を注ぐのか? 中国経済に詳しい東京財団政策研究所の柯隆氏は、「一つはメンツであり、先進国は(電気自動車を)作れないが我々中国は作れるということだ。もう一つは、中国経済が失速している中で、不動産に代わる新たなエンジンとして電気自動車、電池、太陽光パネルの3つを考えているためだ」と話す。

 中国不動産大手の恒大集団が破産し、はじけた不動産バブルの代替産業として電気自動車が注目されているという。

 さらに柯氏によると「日本に持ち込まれる電気自動車は金儲けではなく、アピールやプロモーションのシンボル的存在」なのだという。

 メーカーに対して補助金を出し、電気自動車をアピールする中国政府。しかし柯氏は「補助金はメーカーに対して出されるため、メーカーはフリーランチ(タダでもらえるもの)として考え、売れない車をたくさん作ってしまった。結果として、新車なのにたくさんの電気自動車が廃棄される『EV墓場』ができた。これでは中国経済にとって逆効果だ」と指摘した。

 オンライン販売を行う一部メーカーが在庫管理に失敗し、過剰生産された電気自動車が放置されているEV墓場は中国国内でも問題視されている。また、国際的にも補助金を受けて生産された中国の電気自動車との競争が不公平だとして、欧米が高い関税をかけるなどの経済摩擦も起きている。

 柯氏は「電気自動車の覇権争いで中国が一歩先を行っている状況に欧米各国が慌てている」と見ている。

 「今回の電気自動車の問題は、単なる関税や補助金の問題だけでなく、電気自動車の技術が開発途上にある中で、欧米諸国は中国に電気自動車の充電・電池などの技術の『標準化』を握られ、中国の基準に従わなければならない事態に陥ることを懸念している。つまり何台売れたとか、補助金がどうこうという話は表面的であり、重要なのは標準化の鍵を誰が握るかだ」