空飛ぶクルマに暗雲、メタンガス爆発事故、遅れる工期…大阪万博でトラブルが止まらない「ある意味当然」の理由

AI要約
2025年の大阪・関西万博での空飛ぶクルマの商用飛行が断念された背景には、予想外の問題が続く大阪万博に関する困難がある。巨大プロジェクトは想定外のアクシデントがつきものであり、大阪万博も例外ではない。プロジェクトがあまりにも巨大であることが、予定通りに進まない原因となっている。
空飛ぶクルマに暗雲、メタンガス爆発事故、遅れる工期…大阪万博でトラブルが止まらない「ある意味当然」の理由

 2025年開催の大阪・関西万博でお披露目される予定だった「空飛ぶクルマ」の運行事業者が、当初予定していた万博での商用飛行を断念した。予想外の問題が続く大阪万博。ただ、歴史をひも解くと、こうした展開はある意味、予想通りだったことが分かる。(やさしいビジネススクール学長 中川功一)

● 空飛ぶクルマの雲行きも怪しい? うまくいかない大阪万博

 6月14日、大阪・関西万博の目玉の一つとされていた「空飛ぶクルマ」の開発を手掛ける事業者1社が、万博での商用飛行を断念すると発表した。万博ではデモ飛行を見せるだけにとどめ、デモ飛行中も来場客を乗せないこととしたのである。

 正直なところ、特段、皆さんも驚きはなかったのではないだろうか。まあ、いずれそういう報道が出るだろうなと思っていた人が多いと思う。

 万博をめぐっては、おそらく関係者も含めて国内の大半が「あきらめ」の境地に入っているはずだ。メタンガス爆発事故、相次ぐ参加国の撤退、遅れ続ける工期――集客はおろか、国民の応援すら得られていない。それでもなお撤退できないのだから、我が国の病巣は大変に根深い。

 が、それはともかく。本日のテーマは、「なぜ大阪万博はここまでうまくことが進まないのか?」だ。

 その科学的な答えはあまりにも単純で、そして悲しい。

● 巨大プロジェクトは想定外がつきもの 想定通りに進む確率はたった0.5パーセント!?

 大阪万博のような巨大プロジェクトが予定通りに行ったことは人類史をひも解いてもほとんどない。巨大プロジェクトで想定外のアクシデントが起こることはほぼ必然のこと、だからである。

 巨大プロジェクト研究の第一人者ベント・フリウビヤ教授が記した話題の著書『BIG THINGS』(サンマーク出版)によれば、実に巨大プロジェクトの91.5%が予算か期日、もしくはその両方をオーバーしており、予算、期日、そしてプロジェクトがもたらす便益が想定通りだったケースは実に0.5%に過ぎないという。

 「巨大プロジェクトは絶対に予定通りにはいかない」というのは、もはや人間社会の宿命なのだ。

 われわれは本来、うまくいかないことを想定して、プロジェクトを設計しなければいけない。

 万博推進者たちにミスがあったとすれば、ベストケースの完成予想図に基づいて、自信満々に喧伝して回ったことだろう。とりわけ、初期段階から不確実性が高かった空飛ぶクルマは、万博の目玉の一つにするには、リスクが高すぎた。

 巨大プロジェクトは、なぜ予定通りに進まないのか。

 それは、プロジェクトがあまりにも巨大であることに原因がある。

● “予想通りに予想外”が 起こっている大阪万博

 プロジェクトの中には、無数のアクシデント要因がある。工期、災害、為替、物価、技術……一つ一つは、アクシデントになったとしてもごく小さなものかもしれないし、発生確率もさして大きくはないだろう。

 だが、数千数万ものそうしたアクシデント要因が積み重なれば、何かしらの重大アクシデントが起こる確率は、われわれの想定をはるかに上回るものになる。

 例えば、1%の確率で発生する1000のアクシデント要因があったとして、その全てを回避できる確率は、わずかに0.004%だ(0.99の1000乗)。一方、同じ条件のもとで、3度のアクシデントに見舞われる確率は、12.38%にも達する。