生活費の相談をしたところ、「リースバックしかない」と言われました。しかし娘や妻と住んでいた家を、手放したくありません。他に方法はないのでしょうか?

AI要約

リースバックやリバースモーゲージなど、老後の資金を確保するための不動産活用方法について解説。

リースバックでは、自宅を売却し賃貸契約で住み続けることができるが、売却価格が安くなるリスクあり。

リバースモーゲージは、自宅を担保に融資を受ける方法で、ノンリコース型なら相続人の債務を免れるが金利変動リスクあり。

生活費の相談をしたところ、「リースバックしかない」と言われました。しかし娘や妻と住んでいた家を、手放したくありません。他に方法はないのでしょうか?

老後の生活費を捻出する方法の1つとしては、リースバックなど、保有する不動産を利活用するものが考えられます。

今回は、不動産を老後資金として現金化する方法について解説します。

保有する不動産を老後の資金として活用する方法には、リースバックの他に、リバースモーゲージやマイホーム借り上げ制度があります。

■リースバック

1.概要

リースバックとは、自宅を不動産会社などに売却し、まとまった資金を手にした後に、賃料を支払って同じ家に住みつづける方法で、老後資金と生活基盤を同時に得ることができます(※1)。

2.利用条件

利用するための年齢条件は、特にありません。また、利用できる物件は、戸建てやマンションなどの住宅はもとより、店舗や事務所など幅広い不動産が対象となります。

3.メリットとデメリット

(1)メリット

●住み慣れた家に住みつづけることができます。

●家を所有することで発生するコストやリスクから解放されます。

(2)デメリット

●売却価格は、一般の相場より安くなる可能性があります。

●リフォームや建て替えは自由にできなくなります。

●賃貸契約の種類や内容によっては、住みつづけられなくなる可能性があります。

■リバースモーゲージ

1.概要

リバースモーゲージとは、自宅を担保として金融機関から老後資金を借りる方法で、生存間は利息のみ支払い、死後(融資終了時)に担保物件である自宅を売却して返済します。

リバースモーゲージは、相続人の返済義務の有無によって「リコース型」と「ノンリコース型」の2種類に分かれます。「リコース型」は、担保物件売却後に債務が残った場合、相続人がその債務を返済します。一方「ノンリコース型」は、担保物件売却後に債務が残っても相続人に返済義務はありません。(※2)。

リバースモーゲージには、銀行が取り扱う一般的なリバースモーゲージに加えて、日本住宅支援機構が運営する「リ・バース60」(※3)や地方自治体が福祉施策として行っている「不動産担保型生活資金」(※4)があります。

2.利用条件

一般的なリバースモーゲージの利用条件は、取扱金融機関によって異なりますが、50歳以上の方であれば基本的に使途自由で利用できます。ただし、担保評価額や地域などの条件が定まっており、都市部の住宅などに限定される場合があります(※2)。

「リ・バース60」の利用は50歳以上の方に限られ、本人が居住する住宅の建設や購入、リフォームなどの資金として利用することができますが、生活費として直接利用することはできません。また、融資限度額は、利用者が60歳以上の場合、担保評価額(住宅および土地)の50%または60%(担保物件が長期優良住宅の場合55%または65%)で、最高額は8000万円、かつ所要資金の金額以内となります(※3)。

「不動産担保型生活資金」の利用は、65歳以上の住民税非課税世帯などに限定されます(※4)。

3.メリットとデメリット

(1)メリット

●自宅に住みつづけながら、自宅を担保に融資を受けることができます。

●生活費や住宅のリフォームなど幅広い用途に利用することができます。

●ノンリコース型の返済方法を選択すると、元金の返済は自宅の売却益のみで賄われるため、相続人が債務を負うことはありません。

(2)デメリット

●本人と配偶者以外の同居人がいる場合、利用することができません。

●「リ・バース60」は、生活費として直接利用することはできません。

●土地・建物の価格が下落すると、融資限度額が見直される恐れがあります。

●変動金利に限られるため、金利変動のリスクがあります。

■マイホーム借り上げ制度

1.概要

マイホーム借り上げ制度とは、一般社団法人移住・住みかえ支援機構が、空き家を借り上げ、賃料を支払う制度で、有料老人ホームへの入居などで自宅が空き家となる場合に利用することができます。老後資金として、継続的に家賃収入を得ることができます(※5)。

2.利用条件

利用者が50歳以上であれば、以下の家の条件を満たすだけで、制度を利用することができます(※5)。

(1)利用者が単独または共同所有する日本国内にある住宅であること

(2)建物診断が実施(注)されている住宅であること

(3)建物診断の結果、必要な場合は補強・改修工事が行われていること

(4)居住用の住宅であること

(注)借り上げ基準に適合している住宅かどうかを判断するための調査で、費用は利用者が負担し、「耐震診断」と「劣化診断(建物の劣化や雨漏りなどの検査)」が行われます。なお、昭和56年(1981年)6月1日(新耐震基準)以降の建物で大きな増改築などがない場合は、耐震診断は必要ありません。

3.メリットとデメリット

(1)メリット

●当該住宅に入居者が居ないときでも賃料を得ることができます。

●入居者とのトラブルは機構が対応するため、手間がかかりません。

●運営に国の基金が設定されているため、安心して利用することができます。

●賃貸契約終了後は、本人や家族が再び居住することができます。

(2)デメリット

●制度を利用している間、自宅に住みつづけることはできません。