人手不足と高齢化で崩壊する日本社会の「悲惨な未来」

AI要約

将来の人口推計によると、日本では人口減少が進み、これにより救急車の利用が困難になる可能性がある。

救急隊員の採用難が深刻化し、高齢化に伴う搬送者数の増加もあり、救急車の不足が懸念されている。

少子高齢化により、人口減少社会において安全安心が損なわれる可能性があり、様々な職種において採用難が広がっている。

人手不足と高齢化で崩壊する日本社会の「悲惨な未来」

 国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。

 ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。

 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。

 人口減少日本で救急車が今後は利用困難となるかもしれない。

 総務省消防庁の「2021年版消防白書」によれば、2021年4月1日現在3万4107人の救急隊員が実際に従事している。救急隊員数は増加しているが、そのペースはゆるやかで、過去10年ほぼ横ばい状態にある。

 少子化による働き手世代の減少を考えれば、救急隊員の採用は年々難しくなる。団塊ジュニア世代が退職期を迎える2030年代に入ると深刻な人手不足が予測される。

 消防庁の資料によれば、搬送者数は高齢化に伴って増え、2035年頃には現在より1割ほど増えてピークを迎える。

 これについては、横浜市が独自の推計を行っているが、2030年の出場件数は2015年に比べて1.36倍の24万3304件になるというのだ。

 横浜市の場合には1回の出場にかかる活動時間は約90分で、このまま推移すれば地区によっては救急車が不足するとしている。これは横浜市に限ったことではないだろう。

 「2021年版消防白書」は2020年の病院収容所要時間(119番通報を受けてから医師に引き継ぐまでに要した時間)が平均で約40.6分だったとしているので、大幅に伸びるということだ。

 搬送先の病院が中々見つからないということによる要素が大きいだろうが、高齢者の一人暮らしが増えて救急車に乗せるまでに時間がかかるようになるという側面もあるだろう。

 他方、小規模の消防本部ではすでに搬送者数の減少が始まっている。だが、ニーズが減れば体制の縮小も進むので、今後はむしろ救急隊員1人あたりの負担が重くなることも予想される。

 これら3職種だけでなく、国民の命を直接的に守っている他の職種でも少子化に伴う採用難は広がりを見せる。

 かつて「日本人は空気と水と安全はただ(無料)だと思っている」と言われたが、少子高齢化が進みながら人口が減少していく社会においては、「安全安心」は大きく損なわれることとなりそうだ。

 つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、「ポツンと5軒家はやめるべき」「ショッピングモールの閉店ラッシュ」などこれから日本を襲う大変化を掘り下げて解説する。